8月13日に開催された厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで「第7波における新型コロナウイルス感染症 重症化リスク因子について(速報)」が報告された。
本報告は、蒲川 由郷氏(新潟大学大学院医学総合研究科 十日町いきいきエイジング講座 特任教授)らのグループが、2022年7月1日~31日までに新潟県内で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断・届け出された3万6,937件を対象に調査したもの。
その結果、重症化のリスク因子として70代以上の高齢者、ワクチンの未接種、慢性呼吸器疾患、(非透析の)慢性腎臓病、男性、やせ体形につき、統計学的な有意差があった。
第7波3万6,937件の新潟のCOVID-19患者を解析
【調査概要】
対象など: 2022年7月1日〜31日までに新潟県内でCOVID-19と診断届出された3万6,937件(重症度などの最終確認日は8月10日)。
調査方法:陽性判明時点で収集可能な患者背景から、年齢・性別・ワクチン接種の有無などの患者基礎情報と高血圧・糖尿病・慢性腎臓病などの基礎疾患情報の項目を同時に投入し、多重ロジスティック回帰分析を実施。重症化リスク因子のオッズ比を算出。
【結果】
(1)年代別
・3万6,937例中、103例が中等症II以上だった(中等症・重症化率 0.3%)。
・中等症II以上103例のうち、施設入所者は41例(約40%)で、80代以上は41例中35例。
・年代が高くなるほど、重症化のオッズ比は高い傾向にあり、30代と比較して、70代以上のオッズ比が63〜283と高い値。
(2)性別・ワクチン接種
・女性よりも男性が重症化リスクが高い(オッズ比2.67)。
・ワクチン接種(2回以上)をしていると、重症化リスクが低くなる(オッズ比:2回で0.27、3回で0.2、4回で0.25)。
(3)肥満
・肥満(BMI 25以上)は有意差があるとはいえなかった(オッズ比:BMI 25~30未満で1.6、30以上で1.55)。
・やせ型(BMI 18.5未満)のオッズ比は2.05と高い値だった。これは、やせの高齢者(いわゆるフレイル)が中等症IIとなる割合が大きいためと考えられる。
(4)基礎疾患(オッズ比2以上のみ記載)
・慢性呼吸器疾患(COPD、間質性肺炎、治療中の喘息などを含む)のオッズ比は2.84
・慢性腎臓病の非透析のオッズ比は3.42、透析のオッズ比は2.67
・持続陽圧呼吸療法(CPAP)使用のオッズ比は2.47
・悪性腫瘍のオッズ比は2.24
高齢者では肥満よりもやせ型の感染者に注意
【追加解析】
2022年1~6月(第6波:6万4,000件)と2022年7月(第7波:3万6,937件)を追加解析(合計:10万937件)。
・第6波と第7波での中等症II以上の割合の比較では、第6波の中等症I以下は99.5%、中等症II以上は0.5%だったのに対し、第7波での中等症I以下は99.7%、中等症II以上は0.3%と減少した。
・第7波では少数だが10歳未満でも中等症II以上の患者が発生している(第6波ではみられていない)。
【解析のまとめ】
・中等症II以上のリスクは第6波と比べて第7波で低下。
・80代以上でも、中等症II以上は2.3〜5.8%程度。
・第7波の中等症II以上は、年齢中央値は83歳、4割が施設入所者。
・ワクチン未接種は重症化リスクを上昇させる。中等症II以上の患者のうち、ワクチン未接種は約20%(ワクチン未接種者割合は5〜11歳67.9%、65歳以上4.4%)。
・中等症IIのリスク上昇には、基礎疾患のほとんどは明確な寄与がなく、有意な差があったのは、
(1)高齢(70、80代以上で高い)
(2)ワクチン未接種
(3)慢性呼吸器疾患
*(COPD、間質性肺炎、治療中の喘息を含む)
(4)非透析の慢性腎臓病
(5)男性
(6)やせ(BMI<18.5:高齢者のフレイルなど)
であった。
また、第7波では小児の中等症II以上もみられており、注視が必要(小児へのワクチン接種が重要)。と同時にワクチン未接種者へのワクチン接種が重要である。
*慢性呼吸器疾患ではもともと酸素飽和度が低い状態の方もおり、解釈に留意を要する。
(ケアネット 稲川 進)