新型コロナ、2m超でも感染した事例のリスク因子/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2022/07/08

 

 英国・UK Health Security AgencyのDaphne Duval氏らは、システマティック・レビューの結果、レストラン、公共交通機関、職場、合唱会場といった屋内環境において2m以上離れていても新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染(airborne transmission)が生じる可能性があり、感染に寄与する可能性がある要因として不十分な換気が特定されたことを報告した。SARS-CoV-2感染リスクは、感染者に近接したとき(2m未満)に最も高くなる傾向があり、スーパースプレッダーでは2m超でも感染する可能性が示唆されていたが、詳しいことは不明であった。著者は、「今回の結果は、屋内環境での感染予防対策、とくに十分な換気の必要性を強調するものである」とまとめている。BMJ誌2022年6月29日号掲載の報告。

2020年1月1日~2022年1月19日の18研究についてシステマティック・レビュー

 研究グループは、まずComberらによるシステマティック・レビューに含まれる研究のうち2020年1月1日~7月27日に発表された研究をスクリーニングし、次にMedline、Embase、medRxiv、Arxiv、WHO COVID-19 Research Databaseを用いて2020年7月27日~2022年1月19日に発表された研究を検索し、適格基準を満たした研究についてWeb of ScienceおよびCocitesで引用分析を行った。

 適格基準は、屋内環境(非医療環境)下で2mを超えた距離でもSARS-CoV-2に感染した事例について報告した観察研究とし、濃厚接触または媒介物が主な感染経路と考えられる観察研究(家庭内感染など)は除外した。

 Rayyan Systemsを用いて2人の評価者が独立してスクリーニングし、ほぼ完全に一致した研究について1人の評価者がデータ抽出を行い、もう1人がチェックした。

 主要評価項目は、2mを超えるSARS-CoV-2感染、およびその感染に影響を及ぼした要因とした。組み込まれた研究の方法論的な質は10問で構成される品質チェックリストを用いて厳格に評価し、エビデンスの確実性はGRADE(Grading of Recommendations、Assessment、Development、Evaluation)を用いて評価した。また、設定ごとにNarrative synthesisを行った。

 18件の研究(関連する報告は22報)が解析に組み込まれた(方法論的質が「高」3件、「中」5件、「低」10件)。

「換気不十分」「一方向気流」「大声で歌う・話す」のうち1つ以上でリスク大

 18件のうち、16件の研究では感染イベントの一部あるいはすべてで、2mを超えてSARS-CoV-2感染が発生した可能性があり、2件は不明であった(GRADE:確実性が非常に低い)。

 16件の研究において、換気不十分(確実性が非常に低い)、一方向の空気の流れ(確実性が非常に低い)、大声で歌う・話すなどエアロゾルの放出が増加する活動(確実性が非常に低い)のうち、1つ以上の要因により2mを超える距離でも感染する可能性が高まるようであった。

 13件の研究において主要症例は、無症状、症状発現前または感染時の発症前後であるものが報告された。

 なお、組み込まれた研究の中には、感染調査が十分実施されていたものもあるが、研究デザインに起因するバイアスリスクが残っており、感染経路を十分評価するために必要なレベルの詳細な情報が必ずしも提供されていなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)