抗精神病薬が統合失調症患者のメタボリックシンドローム(MetS)発症に影響していることが、多くの研究で示唆されている。セルビア・クラグイェバツ大学のAleksandra Koricanac氏らは、抗精神病薬治療を受けている統合失調症患者におけるMetSの発症リスクおよび発症しやすい患者像を明らかにするため、検討を行った。その結果、リスペリドン治療患者およびクロザピン治療患者は、アリピプラゾール治療患者よりも、MetS発症リスクが高い可能性が示唆された。また、リスペリドン治療患者は、健康対照群と比較し、TNF-αとTGF-βの値に統計学的に有意な差が認められた。Frontiers in Psychiatry誌2022年7月25日号の報告。
安定期統合失調症患者60例を対象に、単剤使用の各抗精神病薬に応じて3群(リスペリドン群、クロザピン群、アリピプラゾール群)に分類した。また、健康な被験者20例を対照群とした。最初に、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて評価し、その後プロラクチン値、脂質状態、血糖値、インスリン値、サイトカイン値(IL-33、TGF-β、TNF-α)、C反応性タンパク質(CRP)を測定した。BMI、HOMA指数、ウエスト/ヒップ比(WHR)、血圧も併せて測定した。
主な結果は以下のとおり。
・リスペリドン群は、対照群およびアリピプラゾール群と比較し、プロラクチン値に有意な差が認められた。
・クロザピン群は、対照群と比較し、HDLコレステロールおよびグルコースのレベルに有意な差が認められた。
・アリピプラゾール群は、対照群と比較し、BMIの有意な差が認められた。
・統計学的に有意な関連は、リスペリドン群ではTNF-αとグルコースおよびHOMA指数(IL-33とグルコース、TGF-βとグルコース)、クロザピン群ではTNF-αとBMI(IL-33とBMI、TGF-βとインスリンおよびHOMA指数)において認められた。
・アリピプラゾール群のTGF-βとLDLコレステロールにおいて、統計学的に有意な負の関連が認められた。
(鷹野 敦夫)