日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、9月5日に同学会のホームページで「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」を発表した。
このアルゴリズムは2型糖尿病治療の適正化を目的に、糖尿病の病態に応じて治療薬を選択することを最重要視し、エビデンスとわが国における処方実態を勘案して作成されている。
具体的には、「Step 1」として病態に応じた薬剤選択、「Step 2」として安全性への配慮、「Step 3」としてAdditional benefitsを考慮するべき併存疾患をあげ、「Step 4」では考慮すべき患者背景をあげ、薬剤を選択するアルゴリズムになっている。
同アルゴリズムを作成した日本糖尿病学会コンセンサスステートメント策定に関する委員会では序文で「わが国での糖尿病診療の向上に貢献することを期待するとともに、新しいエビデンスを加えながら、より良いものに進化し続けていくことを願っている」と今後の活用に期待をにじませている。
体形、安全性、併存疾患、そして患者背景で判断
わが国の2型糖尿病の初回処方の実態は欧米とは大きく異なっている。高齢者へのビグアナイド薬(メトホルミン)やSGLT2阻害薬投与に関する注意喚起が広く浸透していること、それに伴い高齢者にはDPP4阻害薬が選択される傾向が認められている。
その一方で、初回処方にビグアナイド薬が一切使われない日本糖尿病学会非認定教育施設が38.2%も存在していたことも明らかになり、2型糖尿病治療の適正化の一助となる薬物療法のアルゴリズムが必要とされた。
そこで、作成のコンセプトとして、糖尿病の病態に応じて治療薬を選択することを最重要視し、エビデンスとわが国における処方実態を勘案して制作された。
最初にインスリンの適応(絶対的/相対的)を判断したうえで、目標HbA1cを決定(目標値は熊本宣言2013などを参照)し、下記のステップへ進むことになる。
【Step 1 病態に応じた薬剤選択】
・非肥満(インスリン分泌不全を想定)
DPP-4阻害薬、ビグアナイト薬、α-グルコシダーゼ阻害薬など
・肥満(インスリン抵抗性を想定)
ビグアナイト薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬など
【Step 2 安全性への配慮】
別表
*に考慮すべき項目で赤に該当するものは避ける
(例:低血糖リスクの高い高齢者にはSU薬、グリニド薬を避ける)
【Step 3 Additional benefitsを考慮するべき併存疾患】
・慢性腎臓病:SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬
・腎不全:SGLT2阻害薬
・心血管疾患:SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬
【Step 4 考慮すべき患者背景】
別表
*の服薬継続率およびコストを参照に薬剤を選択
(フォロー)
・薬物療法開始後、およそ3ヵ月ごとに治療法の再評価と修正を検討する。
・目標HbA1cを達成できなかった場合は、病態や合併症に沿った食事療法、運動療法、生活習慣改善を促すと同時に、Step1に立ち返り、薬剤の追加などを検討する。
*別表 安全な血糖管理達成のための糖尿病治療薬の血糖降下作用・低血糖リスク・禁忌・服薬継続率・コストのまとめ―本邦における初回処方の頻度順の並びで比較―(本稿では省略)
(ケアネット 稲川 進)