BA.2.75「ケンタウロス」に対するコロナ治療薬の効果を比較/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2022/09/15

 

 2022年6月よりインドを中心に感染拡大したオミクロン株BA.2.75(別名:ケンタウロス)は、日本を含め、米国、シンガポール、カナダ、英国、オーストラリアなど、少なくとも25ヵ国で確認されている。河岡 義裕氏、高下 恵美氏らによる東京大学、国立感染症研究所、国立国際医療研究センターが共同で行った研究において、BA.2.75に対し、4種類の抗体薬と3種類の抗ウイルス薬についてin vitroでの有効性を検証したところ、一部の抗体薬とすべての抗ウイルス薬が有効性を維持していることが示された。本結果は、NEJM誌オンライン版2022年9月7日号のCORRESPONDENCEに掲載された。

 研究対象となったのはFDA(米国食品医薬品局)で承認済み、および国内で一部承認済みの薬剤で、抗体薬は、カシリビマブ・イムデビマブ併用(商品名:ロナプリーブ、中外製薬)、チキサゲビマブ・シルガビマブ併用(商品名:エバシェルド、アストラゼネカ)、ソトロビマブ(商品名:ゼビュディ、GSK)、bebtelovimab(Lilly)、抗ウイルス薬は、レムデシビル(商品名:ベクルリー、ギリアド・サイエンシズ)、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ、MSD)、ニルマトレルビル(商品名:パキロビッドパック[リトナビルと併用]、ファイザー)となっている。

 今回の試験では、対象の各抗体薬の単剤および併用について、新型コロナウイルスの従来株(中国武漢由来の株)と、オミクロン株BA.2、BA.5、BA.2.75それぞれの培養細胞における感染を阻害(中和活性)するかどうかを、FRNT50(ライブウイルス焦点減少中和アッセイで50%のウイルスを中和する血清希釈)を用いて評価した。また、各抗ウイルス薬について、ウイルスの増殖を阻害するかどうかを、IC50(50%阻害濃度)を用いて評価した。

 主な結果は以下のとおり。

【抗体薬】
・カシリビマブ・イムデビマブ併用では、BA.2.75に対するFRNT50の値は1,811.78ng/mLで、従来株に対してよりも812.5倍高く、中和活性が著しく低下していた。
・チキサゲビマブ・シルガビマブ併用では、BA.2.75に対するFRNT50の値は34.19ng/mLで、従来株に対してよりも5.3倍高かったものの、高い中和活性を維持していた。
・ソトロビマブの前駆体では、BA.2.75に対するFRNT50の値は2万8,536.48ng/mLで、従来株に対してよりも870.0倍高く、中和活性が著しく低下していた。
・bebtelovimabでは、BA.2.75に対するFRNT50の値は6.21ng/mLで、従来株に対してよりも4.4倍高かったものの、高い中和活性を維持しており、モノクローナル抗体の中で最も有効であった。
【抗ウイルス薬】
・レムデシビルでは、BA.2.75に対するIC50の値は1.52μmで、従来株に対してよりも1.6倍高かったものの、高い有効性を維持していた。
・モルヌピラビルでは、BA.2.75に対するIC50の値は0.90μmで、従来株に対してよりも1.5倍高かったものの、高い有効性を維持していた。
・ニルマトレルビルでは、BA.2.75に対するIC50の値は1.78μmで、従来株に対してと同等に、高い有効性を維持していた。

 本研究により、新たな変異型であるBA.2.75に対して、抗ウイルス薬はいずれも有効であり、抗体薬は8月末に国内で承認されたチキサゲビマブ・シルガビマブ併用、および国内では未承認のbebtelovimabが有効であったが、そのほかの抗体薬は有効性が低いことが示唆された。著者は、BA.2.75がBA.5の次の支配的な変異型になるかを見極めるには尚早だが、BA.2.75がより重篤な症状を引き起こす可能性や、免疫回避に関するデータとともに、治療薬の有効性に関する臨床データが必要だとしている。また、患者への治療を検討する際には、各抗体薬の有効性に差が生じる可能性があることを念頭に入れておくべきだと述べている。

(ケアネット 古賀 公子)