塩野義製薬は、10月11日に行われたR&D Day 2022にて、同社が開発中の新型コロナウイルス(COVID-19)経口治療薬ensitrelvir(S-217622)について、症状の発生抑制効果を検証するため、SARS-CoV-2感染症患者(初発患者)の同居家族を対象とした第III相臨床試験(SCORPIO-PEP試験)を、日本と米国などで2022年12月より開始する予定であることを発表した。また、6~12歳未満の軽症・中等症を対象とした日本での第III相試験や、入院患者を対象とした米国、欧州などでの第III相試験を、ともに2022年11月から実施することなども明らかにした。
説明会資料によると、COVID-19発症予防効果の検証のための第III相試験は、無作為化二重盲検プラセボ対照試験にて、日本と米国、そのほか数ヵ国の2,040例を対象に実施される。SARS-CoV-2に感染した初発患者の同居家族に対して、ensitrelvir投与群とプラセボ群とを比較し、投与開始から10日間後のCOVID-19症状の発症抑制効果を検証する。本試験は、2023年7~9月での症例集積完了を目指している。
なお、ensitrelvirのマウス感染モデルでの予防効果試験では、SARS-CoV-2感染24時間前に用量128mg/kg、64mg/kg、32mg/kgの3パターンで本剤を単回皮下投与して比較した結果、投与量64mg/kg以上(感染時血漿中濃度2.99μg/mL)で致死抑制効果が認められたとし、予防的にensitrelvirを投与することにより、SARS-CoV-2感染マウスの生存率が改善した。
ensitrelvirの小児への臨床試験については、6~12歳未満の軽症・中等症を対象に、錠剤投与による試験を国内で11月に開始するほか、0~6歳未満を対象として、顆粒製剤を使ったグローバル第III相試験を計画している。12~18歳未満については、国内とグローバルで実施中の第II/III相試験結果を基に、日米欧の適応取得を検討している。
また、同社の開発する新型コロナワクチン(S-268019)については、年内に承認申請を行う方針を明らかにした。変異株への対応として、S-268019臨床試験検体における追加免疫時の中和抗体価は、ファイザー製ワクチンによる追加免疫時の中和抗体価と同程度だという。なお、オミクロン株の遺伝子情報を基にした抗原製造プロセスの検討は最終段階にあるとしている。
(ケアネット 古賀 公子)