DPP-4阻害薬の副作用「類天疱瘡」、適切な処置の注意喚起/PMDA

提供元:ケアネット

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公開日:2023/07/31

 

 糖尿病治療薬DPP-4阻害薬やその配合剤の副作用として知られている類天疱瘡。DPP-4阻害薬服用後にこの副作用を疑う皮膚異常がみられたにもかかわらず、投与が継続され類天疱瘡の悪化を来し入院するケースが報告されているという。これに対して医薬品医療機器総合機構PMDAは7月27日に医薬品適正使用のお願いを発出した。

DPP-4阻害薬の副作用として類天疱瘡は以前から添付文書に記載

 PMDAは以下のように注意を呼びかけている。

<DPP-4阻害薬による類天疱瘡への適切な処置について>
DPP-4阻害薬の使用中に、そう痒を伴う浮腫性紅斑、水疱、びらん等が現れ、類天疱瘡の発現が疑われる場合には、速やかに皮膚科医と相談し、DPP-4阻害薬の投与を中止するなどの適切な処置を行うよう、注意をお願いいたします。

【代表的な症例】
70代・男性。
シタグリプチン投与開始後、3~4ヵ月目に水疱出現、自然軽快を繰り返し、投与7ヵ月目に水疱が多発し全身に広がり、投与8ヵ月目にクリニック受診。内服薬および外用薬で治療したが改善せず、皮膚科を受診。水疱性類天疱瘡の診断となり、入院。治療により改善しプレドニゾロン減量のうえで、投与9ヵ月目に退院となったが、再度水疱が出現し、水疱形成増悪が確認され、再入院。プレドニゾロンを増量したが改善せず、血漿交換療法を施行。薬剤性の水疱性類天疱瘡が疑われ、シタグリプチンの投与を中止。プレドニゾロンを減量し、シタグリプチンの中止11日後、水疱性類天疱瘡は回復し、退院した。
―――

 類天疱瘡は、血液中に存在する皮膚の基底膜に対する自己抗体が自己抗原に反応して、皮膚を傷害し、皮膚に水ぶくれ(水疱)を作る病気1)。DPP-4阻害薬やその配合薬の各添付文書には以前から副作用として記され、日本糖尿病学会での演題にも上がるほど比較的認知度の高い副作用ではある。しかし、DPP-4阻害薬やその配合薬の副作用報告数は2018年(365件)をピークに右肩下がりではあるものの、2022年時点でもなお149件報告されている。

<該当医薬品>
アナグリプチン含有製剤(商品名:スイニー錠、メトアナ配合錠LD/HD)
アログリプチン安息香酸塩含有製剤(ネシーナ錠、イニシンク配合錠、リオベル配合錠LD/HD)
オマリグリプチン(マリゼブ錠)
サキサグリプチン水和物(オングリザ錠)
シタグリプチンリン酸塩水和物含有製剤(グラクティブ錠、ジャヌビア錠、スージャヌ配合錠)
テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物含有製剤(テネリア錠/OD錠、カナリア配合錠)
トレラグリプチンコハク酸塩(ザファテック錠)
ビルダグリプチン含有製剤(エクア錠、エクメット配合錠LD/HD)
リナグリプチン含有製剤(トラゼンタ錠、トラディアンス配合錠AP/BP)

(ケアネット 土井 舞子)