脳卒中後の認知機能障害および認知症の確立したリスク因子として、高齢や重度の脳卒中が報告されているほか、心房細動や糖尿病の既往歴なども示唆されている。今回、治療可能なリスク因子に焦点を当て、それらの関連の強さを、ドイツ・ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのJule Filler氏らがシステマティックレビューおよびメタ解析で明らかにした。Lancet Healthy Longevity誌2024年1月号掲載の報告。
脳卒中後の認知機能障害は脳卒中後4年の時点で最大80%1)に、脳卒中後の認知症は脳卒中後1年の時点で最大40%2)に認められ、患者・介護者・医療制度に大きな負担をもたらしている。研究グループは、システマティックレビューおよびメタ解析を行い、年齢や脳卒中の重症度以外のリスク因子、とくに治療可能なリスク因子に焦点を当てて評価を行った。
研究グループは、MEDLINEとCochraneをデータベースの開設から2023年9月15日まで検索した。急性脳卒中(虚血性/出血性脳卒中、一過性脳虚血発作)患者を対象とした前向きおよび後向きコホート研究、無作為化対照試験の事後解析、ネステッドケースコントロール研究を解析し、ベースライン時のリスク因子と少なくとも3ヵ月の追跡期間における脳卒中後の認知機能障害および認知症との関連を検討した。ランダム効果メタ解析を用いてプールされた相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)を算出した。
主な結果は以下のとおり。
・システマティックレビューの対象となった論文は162報で、このうち113報(89研究、16万783例)がメタ解析の対象となった。
・ベースライン時の認知機能障害は、脳卒中後の認知機能障害(RR:2.00、95%CI:1.66~2.40)および脳卒中後の認知症(3.10、2.77~3.47)の最も強いリスク因子であった。
・脳卒中後の認知機能障害の治療可能なリスク因子として、糖尿病(RR:1.29、95%CI:1.14~1.45)、心房細動の合併/既往(1.29、1.04~1.60)、中等度または重度の大脳白質病変(1.51、1.20~1.91)、大脳白質病変の重症度(1.30、1.10~1.55[1SD増加当たり])を年齢や脳卒中の重症度とは別に同定した。
・脳卒中後の認知症の治療可能なリスク因子は、糖尿病(RR:1.38、95%CI:1.10~1.72)、中等度または重度の大脳白質病変(1.55、1.01~2.38)、大脳白質病変の重症度(1.61、1.20~2.14[1SD増加当たり])であった。
・そのほかのリスク因子として、低学歴、脳卒中の既往、左半球の脳卒中、3つ以上の閉塞、脳萎縮、ベースライン時の認知機能の低さなどがあった。
・リスク因子と脳卒中後の認知症との関連は、近年に実施・発表された研究では弱かった。
これらの結果より、研究グループは「今後の臨床試験では、脳卒中後の認知機能障害および認知症の予防のための潜在的標的として、これらのリスク因子を検討すべきである」とまとめた。
(ケアネット 森 幸子)