転移を有する腎細胞がん(mRCC)における血中循環腫瘍DNA(ctDNA)の臨床的有用性が指摘されているが、大規模なデータは不足している。産学連携全国がんゲノムスクリーニングコンソーシアム(SCRUM-Japan)によるMONSTAR-SCREEN1の泌尿器がんグループから、大阪大学の加藤 大悟氏がmRCCにおけるctDNA解析結果を第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。
2019年4月~2021年9月、mRCC患者124例を対象に治療前後のctDNA解析(商品名:FoundationOne Liquid CDx)を実施した。34例については組織検体を用いたゲノムプロファイリング(商品名:FoundationOne CDx)も実施された。
主な結果は以下のとおり。
・患者特性は年齢中央値が66(21~83)歳、男性が76.0%、淡明細胞型が91.0%、IMDCリスク分類はIntermediateが61.2%、Poorが21.5%であった。
・1次治療の症例が74.4%を占め、うち92.7%が免疫チェックポイント阻害薬併用療法を受けていた。
・組織検体と血漿検体の検査結果の一致率は16.8%で、18%という過去の報告1)と同様であった。
・治療前ctDNAにおけるtumor fraction(TF)中央値は1.15%(四分位範囲:0.62~2.85)であり、治療前TF>1.2%の症例と比較し治療前TF<1.2%の症例で有意に予後が良好であった(全生存期間中央値:28.3ヵ月vs.NR、p=0.0143)。
・84.5%で何らかの病的変異が検出され、1症例当たりの変異数中央値は3であった。
・治療前ctDNAにおけるBAP1(p=0.0003)およびTP53(p=0.025)の変異は予後不良と有意に関連していた。
・治療前後のctDNAの一致率は54.6%で、TP53、VHLなどで治療後に新たに変異が発現あるいは発現頻度が増加した。
・病勢進行までの期間について、新規遺伝子変異が認められた症例ではそれ以外の症例と比較して有意に短く(中央値:14.1週vs.44.8週、p=0.046)、新規遺伝子変異数が多いほど短かった(p=0.032)。
・治療後の新規遺伝子変異のうち7つについては、FDA承認済の薬剤の対象となりうることが明らかとなった。
加藤氏は、「本データはアジア人mRCC患者における最初の大規模なctDNAを用いた遺伝子プロファイリングデータであり、臨床予後との関連が示された。今後はリファレンスデータとして活用されることが期待され、現在はアジア人とヨーロッパ人の間のctDNAにおける特徴の違いの評価にも取り組んでいる」とした。
(ケアネット 遊佐 なつみ)