注意欠如多動症(ADHD)の治療薬は、心血管系に対する交感神経刺激作用を有していることが知られているが、包括的な世界的データを用いた評価は、あまり行われていない。韓国・慶熙大学校のHanseul Cho氏らは、世界的な医薬品安全性監視データを用いて、ADHD治療薬と心血管疾患との関連を調査した。Asian Journal of Psychiatry誌オンライン版2024年8月30日号の報告。
分析には、1967〜2023年のWHO国際医薬品安全性監視データーベースからのレポート1億3,125万5,418件を用いた。各薬剤と特定の心血管疾患との関連を評価するため、報告オッズ比(ROR)およびinformation component(IC)を算出した。
主な結果は以下のとおり。
・ADHD治療薬に関連する報告14万6,489件のうち、心血管疾患は1万3,344件であった。
・ADHD治療薬に関連する累積報告数は、2010年以降、とくに成人において増加が認められた。
・ADHD治療薬は、全体的に心血管疾患リスクの上昇と関連がみられ(ROR:1.60、95%信頼区間:1.58〜1.63、IC:0.63、IC0.25:0.60)、この関連性は、男性よりも女性において強く関連していた。
・特定の心血管疾患では、すべての薬剤において、トルサード・ド・ポアント/QT延長、心筋症、心筋梗塞のリスク上昇と関連が認められた。
・心不全、脳卒中、心臓死/ショックとの関連が認められた薬剤は、アンフェタミンのみであった。
・リスデキサンフェタミンは、アンフェタミンと比較し、心血管疾患との関連性が弱かった。
・メチルフェニデートは、心血管疾患との関連性が最も低かった。
・アトモキセチンは、トルサード・ド・ポアント/QT延長との関連性が2番目に高かった。
著者らは「心血管疾患とADHD治療薬との関連は、さまざまであり、アンフェタミンはリスクが高いものの、リスデキサンフェタミンおよびメチルフェニデートは、安全性が良好であることが示唆された」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)