アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションは、一般的な症状であるが、これに伴う医療負担はよくわかっていない。米国・Inovalon InsightsのChristie Teigland氏らは、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションを有する患者とアジテーションのない患者におけるベースライン特性、医療資源の利用、コストの評価を行った。Journal of Health Economics and Outcomes Research誌2024年10月29日号の報告。
対象は、2009〜16年のメディケア有料請求データベースよりアルツハイマー病および認知症で30日以上の間隔で2件以上の請求があり、診断6ヵ月前および12ヵ月後に医療/薬局保険に継続加入していたメディケア受給者。重度の精神疾患患者は除外した。アジテーションの有無により2つの患者コホートを定義し、記述的探索分析により患者の特徴、医療資源の利用、コストの比較を行った。
主な結果は以下のとおり。
・アルツハイマー型認知症患者268万4,704例中76万9,141例が包括基準を満たした。
・そのうち、アジテーションを有する患者は28万1,042例(36.5%)であった。
・アジテーションの有無に関わらず、アルツハイマー型認知症患者の平均年齢は83歳。
・両群共に女性の割合が高かったが、アジテーションを有する患者群では、男性の割合がわずかに高かった(30.3% vs.28.2%)。
・アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションを有する患者は、アジテーションのない患者と比較し、社会経済的地位が低い(メディケイド二重受給資格:45.0% vs.41.7%)、障害がある(10.5% vs.9.4%)傾向が高かった。
・全体的に、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションを有する患者は、アジテーションのない患者よりも医療費が高額であり(患者1人当たりの年間医療費の平均:3万2,322ドル vs.3万121ドル)、入院および急性期ケア後の医療費に、最も大きな差が認められた。
著者らは「アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションを有する患者は、経済的な負担が大きく、関連する健康アウトカム改善のためにも、新たな治療オプションの必要性が浮き彫りとなった」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)