認知症の中で最も多いアルツハイマー病は、認知症患者の70%を占める。日本では、2018年に65歳以上の高齢者500万人以上が認知症に罹患しており、この年齢層における患者数は2045年までに25〜30%増加すると予想されている。2023年、新たに認知症治療薬として承認されたレカネマブは、今後ますます使用されると予想されている。しかし、レカネマブの使用では、アミロイドPETスキャンやMRIモニタリングなどの厳格なマネジメントが必要とされ、専門施設の拡大が求められるため、治療施設の不足や治療アクセスの悪さに関する懸念が課題となる。北海道大学の大橋 和貴氏らは、地理情報システムデータを用いて、北海道におけるレカネマブの空間的アクセスの評価を行った。Health Services Insights誌2024年11月18日号の報告。
医療施設は、治療基準(日本認知症学会専門医1人以上、1.5T以上のMRI、アミロイドPETの自施設または他施設との契約、脳神経外科を有する)を満たす能力に基づき3つに分類した。すべての基準を満たす施設をA群(9施設)、認知症専門医はいないが他の基準を満たす施設をB群(15施設)、設備はあるが人員が不足している施設をC群(19施設)とした。サービスエリア分析では、車での移動時間が30分、60分、120分以内における人口カバー率で評価した。ニ段階需給圏浮動分析法を用いて、各施設の潜在的高需要エリア指数(PHDI)を算出した。
主な結果は以下のとおり。
・医療施設分類と移動時間に応じた人口カバー率は、56〜97%の範囲であった。
・A群のカバー率は、移動時間30分以内で56%、60分以内で73.9%、120分以内で88.3%。
・カバー率は、北海道北部および南部で最も低かった。
・PHDI分析では、高需要エリアが特定され、札幌において潜在的に過剰な問題に直面していることが示唆された。
著者らは「レカネマブは、アクセス性と基準施設の増加を強化するために、戦略的なリソースを割り当てる必要性が浮き彫りとなった。認知症治療のメリットを最大限に高めるためには、とくにアクセスや基準施設数に課題がある地域に新たな治療センターを設置することが重要であろう」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)