ジムでトレーニング中に心停止した女性を救った人々―AHAニュース

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/12/06

 

 米国ジョージア州に住む37歳の女性、Nicole Tetreaultさんは数日間、頭痛と吐き気に悩まされていた。しかしそれも回復したため、日曜日には夫のBrianさんと2歳になる長女のEllaちゃんとともに、朝食後の散歩を楽しんだ。また、しばらく休んでいたジム通いも再開した。ジムのクラスには、会ったことのない新しいメンバーの顔も見られた。

 ウォームアップ中、Nicoleさんは鏡に映った自分の姿を見て、「疲れているな。今日は追い込まないようにしよう」と思った。それから数分後、彼女は最初のセットをスタートしてウェイトを上げ始めた時、その場に倒れ込んだ。体はけいれんし、口から泡を吹き、皮膚は紫色に変色していた。そして、息をしていなかった。

 彼女の隣でトレーニングしていた新メンバー、Jen Boyerさんは元看護師だった。直ちにNicoleさんの状態を評価し、CPR(心肺蘇生)を開始した。フィットネスインストラクターで、CPRやAED(自動体外式除細動器)のインストラクターでもあるPhillip Thomasさんは、ジム内のAEDに向かって走り出すと同時に、スタッフに119番通報を指示。フロントのTaylor Briedeさんが電話をした。クラスのほかのメンバーであるKim BickertonさんとEva Millsさんが交代でBoyerさんを助けた。

 6分たたずに救急隊が到着。ジム内での2回の除細動により心拍が再開後、病院に搬送された。救急車の中でNicoleさんの心臓は再び停止し、除細動で再開した。病院到着後は医師の判断により、脳のダメージが回復するまで麻酔管理が続けられ、目を覚ましたのは3日後だった。

 Nicoleさんはベッドサイドの看護師に、「どうして私はここにいるの?」と尋ねた。彼女には自分に起きたことの記憶がなかった。しかし、夫に電話をかけるよう看護師に促され、そうしようとした時、夫の電話番号をきちんと暗唱できた。それにより、彼女の脳は深刻なダメージを回避できたと判断された。

 その翌日、医師はNicoleさんに、検査をしても心停止の原因がわからなかったと伝え、再発防止のためにICD(植込み型除細動器)の使用を勧めた。彼女は同意し、手術を受けた。

 退院して帰宅すると夫のBrianさんに、数日前に自分を助けてくれた人々のリストを示された。彼女はまず一人一人に電話をかけてお礼を述べ、改めて2人でジムを訪れ直接会って感謝を伝えた。2人はその時になって初めて、あの日、Nicoleさんがどのような状態に陥ったのかを詳しく知った。ジムのスタッフはセキュリティービデオの映像を見てみないかと提案したが、2人は見ないことを選んだ。

 それからしばらくして、地元の警察は、Nicoleさんの救助に携わった人々を表彰するためのイベントをジムで開催した。Nicoleさんは、「あの時、文字通り私は死の縁に立っていた。皆さんがいなかったなら、今ここに私はいないはずだ」と語り、再度感謝を述べた。Brianさんも、「躊躇なく妻を救ってくれた善良な人々の行動に深く心を揺り動かされた」と述べた。

 Nicoleさんは現在、CPRやAEDの使用法習得のためのイベントに参加して講演することを続けている。その場に偶然居合わせた人々のおかげで命が救われた自分の体験を、これから命の恩人と呼ばれる体験をするかもしれない人々に向かって話している。彼女はまた、最初にCPRをしてくれた人物であるBoyerさんと特に親しくなった。Boyerさんは、「もっと簡単な方法でNicoleさんと友達になりたかった」とジョークを飛ばしながらも、Nicoleさんのことを「心の姉妹(soul sister)」と呼んでいる。

 Nicoleさんの心停止から3カ月後、主治医は遺伝子検査により、ついに原因を突き止めた。Nicoleさんは、カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)を引き起こす可能性のある、まれな遺伝子変異を持っていた。CPVTそのものに対する治療法はない。しかしICDの植込みと服薬、定期的な診察によってコントロール可能だ。

 今年の1月、Nicoleさんは長男のBrantley君を出産した。Brantley君とEllaちゃんはこれから、遺伝子検査と定期的なモニタリングを受ける予定だ。

 「誰もがCPRのトレーニングを受け、AEDを手の届く所に設置すべきだ。私はそうすることが必要な理由を示す、教科書的な一例である。私の使命は、生命が脅かされる状況で、CPRとAEDがどれだけ効果的であるかを人々に示すことにある」とNicoleさんは語っている。

[2022年10月13日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
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