院外心停止後、目標SpO2として90~94%は有効か/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2022/11/04

 

 院外心停止後、自発循環を回復した意識不明の成人に対する、集中治療室(ICU)入室までの酸素飽和度90~94%をターゲットとした酸素療法は、98~100%をターゲットにした場合と比べ、生存退院率を有意に改善しなかった。ICU入室までの低酸素イベント発生率も、90~94%ターゲット群で有意に高率だった。オーストラリア・Ambulance VictoriaのStephen A. Bernard氏らが、425例を対象に行った無作為化比較試験「EXACT試験」の結果で、「試験はCOVID-19パンデミックにより早期中断となったが、試験結果は、心停止後の循環回復後における院外での酸素飽和度90~94%をターゲットした酸素療法を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌オンライン版2022年10月26日号掲載の報告。

オーストラリア、15の病院と2つの救急医療サービスで無作為化試験

 研究グループは、オーストラリアのビクトリア州と南オーストラリア州の2つの救急医療サービス(EMS)と15の病院を通じ、院外心停止後に自発循環を回復し、100%酸素吸入時に末梢動脈血酸素飽和度(SpO2)が95%以上の意識不明の成人を対象に、多施設共同並行群間無作為化比較試験を実施した。EMSと病院から2017年12月11日~2020年8月11日に医療記録データを収集した(最終フォローアップは2021年8月25日)。

 被験者をパラメディックにより無作為に2群に分け、ICU入室までの間、一方には酸素飽和度90~94%をターゲットに(介入群)、もう一方には酸素飽和度98~100%をターゲットに(標準ケア群)、それぞれ酸素療法を行った。

 主要アウトカムは、生存退院率だった。副次アウトカムは9項目で、低酸素(SpO2<90%)や再心停止を伴う低酸素症など、事前に規定した重度有害イベントなどだった。

生存退院率、介入群38.3%、標準治療群47.9%

 本試験は当初、被験者数1,416例を予定していたが、428例(介入群216例、標準ケア群212例)が無作為化を受けた時点でCOVID-19パンデミックにより中断となった。主要解析には425例(介入群214例、標準ケア群211例)が包含され(年齢中央値65.5歳、女性100例[23.5%])、全例が試験を完了した。

 生存退院率は、介入群38.3%(214例中82例)に対し、標準ケア群が47.9%(211例中101例)と有意に高率だった(群間差:-9.6%[95%信頼区間[CI]:-18.9~-0.2]、補正前オッズ比[OR]:0.68[95%CI:0.46~1.00]、p=0.05)。

 入院中に集められた事前規定の9項目の副次アウトカムのうち、8項目は有意差がなかった。

 ICU入室までの低酸素エピソードは、介入群31.3%(67例)、標準治療群16.1%(34例)報告され、有意差が認められた(群間差:15.2%[95%CI:7.2~23.1]、OR:2.37[95%CI:1.49~3.79]、p<0.001)。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)