米食品医薬品局(FDA)は4月6日、早産予防を適応として販売されていたヒドロキシプロゲステロンカプロン酸エステル注射液(米国での商品名Makena)の承認を正式に撤回した。
同薬は、自然早産の既往を有する単胎妊娠女性の早産リスクを低減するとして、FDAの迅速承認プログラムで2011年に初承認された。しかし、迅速承認の条件となっていた市販後の臨床研究で、その有効性が疑問視されるとともに、血栓やうつ病などの深刻な副作用の発生が指摘されていた。
このためFDAは、Makenaの承認撤回を長らく模索していた。2020年には、有効性のエビデンス不足と副作用の問題から、FDA傘下の医薬品評価研究センター(CDER)が同薬の承認撤回を提案。2022年10月に開催されたFDA諮問委員会で、パネルメンバーが14票対1票で市場撤退を勧告したことを受けて、今回の承認撤回につながった。
FDAのRobert Califf氏はニュースリリースの中で、「科学研究分野と医療分野において、早産予防と早産で生まれた新生児の予後改善に有効性を示す治療法をまだ見つけられていないことは痛恨である。しかし原則として、FDAにおける医薬品の承認の基準は、ベネフィットとリスクの良好な評価にある。そのためFDAとしては、良好な評価を得られない医薬品の承認は維持できない」とコメントした。
FDAはMakenaの承認撤回にあたり、早産が黒人女性にとって重大な健康リスク格差をもたらしているという事実を強く認識していると指摘した。FDAのチーフサイエンティストであるNamandje Bumpus氏は、「早産は母子双方の健康にとって深刻な問題であり、黒人女性の早産を含む健康格差に社会・医療制度が影響していることを、われわれはまず認識している。今回の決定は、こうした懸念を軽視することを意図したものでは断じてなく、むしろ、今後の研究の活性化につながることを期待したものである」と述べている。
今年3月には、Makenaを有する製薬企業であるCovis Pharma社が同薬を市場から撤退させた。同社の最高イノベーション責任者であるRaghav Chari氏は、撤退時のプレスリリースの中で、「早産のリスクが最も高い女性に対する有効性を含め、Makenaはベネフィットとリスクの良好な結果を有すると当社は考えている。それでも、自主的に製品を撤回し、FDAと協力して秩序ある回収を目指していく」と述べていた。
[2023年4月6日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら