孤立や孤独が寿命にかかわる可能性のあることを示唆する研究結果が報告された。研究参加者数の合計が220万人以上に及ぶ世界各国から報告された90件の研究データを統合した解析から、社会的に孤立している、または孤独を感じている人は、早期死亡のリスクが高いことが示された。ハルビン医科大学(中国)のMaoqing Wang氏、Yashuang Zhao氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Human Behaviour」に6月19日掲載された。
社会的孤立や孤独が人々の健康や幸福にどのような影響を与えるのかについて、完全には理解されていないものの、両者を結びつける多くの理論が存在すると、研究者らは述べている。例えば、そのような状況にある人には、体に良い食事や運動をせず、喫煙や飲酒の習慣のある人が多く含まれていたり、社会とのつながりが少ないために必要な医療を受ける機会が限られていたりする可能性があるという。また、社会的孤立が炎症や免疫力の低下と関連していることも報告されているとのことだ。
社会的孤立と孤独は同じではない。前者はほかの人々との接点が欠如した状態を指し、後者はそのような状況とかかわりなく、自分が1人きりだと感じることを指す。今回の研究では、90件、220万5,199人の研究データのメタ解析が行われた。その結果、社会的孤立と孤独の双方が、全死亡(あらゆる原因による死亡)やがん死のリスク上昇と有意に関連していることが分かった。また社会的孤立に関しては、心血管死リスクとの関連も有意だった。ただし、社会的孤立と孤独の評価指標が研究によって異なることや、大半の研究が高所得国で行われたものといった限界点もあり、結果の一般化には留意が求められるという。
この報告について、研究には関与していない米ブリガムヤング大学のJulianne Holt-Lunstad氏は、「われわれは2015年に、孤立と孤独の双方が死亡リスクの重要な予測因子であるというメタ解析の結果を報告しているが、今回報告された結果もそれと一致している。また、米国公衆衛生総局の孤立と孤独に関する勧告とも重なり合う」と話している。同氏はその勧告の著者陣の1人でもある。
Holt-Lunstad氏はまた、「人は孤立していても孤独でないこともあるし、孤独であっても孤立はしていないこともある。今回の研究結果は、孤立の方が死亡リスクへの影響が強いことを示している」と解説。さらに、「社会的孤立と孤独に焦点を当てた啓発活動や公衆衛生対策の推進が求められる。個人的に孤立や孤独を好むという人もいるだろう。しかし、90件のメタ解析の結果から、それが早期死亡のリスクとなる可能性が明らかになったからには、そのような人はそのままにしておいて良いとする考え方には賛同できない」とも語っている。
米国癌協会のRobin Yabroff氏もこれに同調。「社会的孤立や孤独と闘い、健康を獲得するためにすべきことは多々ある。例えば、個人個人が社会的コミュニティーグループに積極的に参加すること、孤立して孤独に直面している人たちに手を差し伸べること、孤独感につながりやすいソーシャルメディアの過度の使用を避けることなどが必要だ」と述べている。
[2023年6月19日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら