好きな酒の種類が、その人の生活習慣を知る手がかりになる可能性を示す研究結果が報告された。ビール好きの人は、ワインや蒸留酒などを好む人と比べて不健康な生活習慣を送っている人が多いことが明らかになったという。米テュレーン大学医学部研修医プログラムのMadeline Novack氏らによるこの研究結果は、米国肝臓学会議年次学術集会(AASLD 2024、11月15~19日、米サンディエゴ)で発表され、「Nutrients」に11月13日掲載された。
Novack氏は、「米国では、アルコールの過剰摂取が肝硬変の主な要因となっている。また、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)も急増している」と話す。同氏はまた、「これらの肝疾患は併存することも多く、管理や予防には生活習慣の改善が重要だ。そのためには、飲酒と栄養不良の関係について理解することから始める必要がある」とAASLDのニュースリリースの中で述べている。
Novack氏らは今回の研究で、飲酒習慣がある1,917人の米国成人(平均年齢46.8±0.8歳、男性56.5%)の全国調査データを分析した。調査の回答者は、食習慣に関する詳細な質問に答えていた。
調査では、回答者の38.9%がビールのみ、21.8%がワインのみ、18.2%が蒸留酒/カクテルのみ、21.0%が複数種類の酒を飲むと回答していた。また、飲んでいる酒の種類にかかわらず、飲酒習慣のある人で食事の質の評価指標である健康食指数(HEI、100点満点)で、十分に健康的な食生活と見なされる80点を達成している人はいなかった。
ビールのみを飲む人は、ワイン、または蒸留酒/カクテルのみを飲む人、複数種類の酒を飲む人と比べて、世帯収入と食事の質が低く、身体活動量が少なく、喫煙者が多い傾向が認められた。具体的には、ビールのみを飲む人では、貧困ラインの閾値を下回る人の割合が高く(12.7%、ワインのみ飲む人5.7%、蒸留酒/カクテルのみ飲む人9.6%、複数種類の酒を飲む人6.0%、以下、同順で記載)、HEIが低く(49.3点、55.1点、52.8点、52.6点)、喫煙者の割合が高く(27.8%、10.0%、19.9%、15.3%)、身体活動量が十分な人の割合が少なかった(42.2%、59.8%、46.1%、59.3%)。さらに、ビールのみを飲む人は、1日当たりの総カロリー摂取量が最も多かった。
Novack氏は、ビールのみを飲む人に多く認められた、食事の質の低さ、身体活動量の少なさ、喫煙といった生活習慣要因は、すでに過度の飲酒習慣があり、肝疾患の発症リスクがある人の健康に大きな影響を与える可能性があることを指摘している。
またNovack氏は、飲む酒の種類によってどんな食品を食べるかが決まる傾向があることも、食事の違いを生んでいる可能性があるとの見方を示している。その例として、ビールは食物繊維が少なく炭水化物が多い食品や、加工肉などとともに飲まれがちである一方で、ワインは肉や野菜、乳製品と一緒に飲む場合が多いことを同氏は指摘している。また、食品の種類によって特定のアルコール飲料を飲みたくなることも、要因の一つとして考えられると同氏は付け加えている。例えば、揚げ物や塩分の多い食べ物は、ワインや蒸留酒よりもビールを飲みたい気持ちにさせる可能性が高いとしている。
[2024年11月13日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら