無症候性アテローム性動脈硬化症では、頸動脈プラークの負荷(carotid plaque burden;cPB)と冠動脈石灰化(coronary artery calcium;CAC)が全死亡と有意に関連していることを明らかにした研究結果が、カルロス3世国立心血管研究センター(スペイン)のValentin Fuster氏らにより、「Journal of the American College of Cardiology」10月8日号に発表された。
アテローム性動脈硬化症は進行性のプロセスであるが、無症候性の段階でも、頸動脈での動脈硬化の程度や進行を定量化することで全死亡リスクを予測できるのかどうかについては、エビデンスがほとんどない。
BioImage研究は、リスクのある無症候性の成人におけるアテローム性動脈硬化症の負荷の評価を目的にした大規模研究で、2008年から2009年に無症候性の米国成人7,687人を登録して開始された。参加者は、頸動脈の超音波検査とCT検査によるCACスコアリングが実施されており、今回は、必要なデータのそろった5,716人(平均年齢68.9歳、女性56.7%)を解析対象とした。このうち732人は、中央値で8.9年後に再び頸動脈の超音波検査を受け、cPBの進行を評価されていた。参加者は、2021年10月まで全死亡について追跡された。
中央値12.4年の追跡期間中に901人(16%)が死亡していた。ベースラインのcPBとCACスコアを三分位数で3群に分類し、全死亡との関連をCox比例ハザード回帰分析により評価した。その結果、cPBとCACスコアはいずれも、年齢、性別、人種、心血管リスク因子、使用している薬剤で調整後も、全死亡と有意な関連を示し、三分位群のカテゴリーが1つ上がるごとのハザード比(HR)は、それぞれcPBで1.23(95%信頼区間〔CI〕1.16〜1.32、P<0.001)、CACスコアで1.15(同1.08〜1.23、P<0.001)であった。cPBとCACスコアをモデルに追加することで、全死亡リスクの予測精度は有意に向上した。向上の程度はcPBを追加する方が高かったことから、リスクの評価においてcPBはCACスコアよりも重要な指標であることが示唆された。
次に、頸動脈の超音波検査の再検査を受けた732人の参加者を対象に、cPBの進行と全死亡との関連をCox比例ハザード回帰分析により評価した。参加者を、ベースラインと追跡調査時のcPBの変化により、「進行なし(いずれの検査でもcPB=0)」「後退(cPBが減少)」「進行(cPBが増加)」に分類したところ、571人(78.0%)が「進行」、63人(8.3%)が「後退」、98人(13.4%)が「進行なし」に該当した。cPBの進行は、上述の因子の調整後も全死亡と有意な関連を示した(cPBが10mm3増加するごとのHR 1.03、95%CI 1.01〜1.04、P=0.01)。
著者らは、「アテローム性動脈硬化症の無症状期間の長さは、現時点では十分に活用されていないが、早期介入や予防策を講じる良い機会となり得る」と述べている。
[2024年10月4日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら