降圧薬のARBは脳卒中後のてんかん予防に効果的

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/12/31

 

 脳卒中を経験した人では、傷害を受けた脳組織の神経細胞に過剰な電気的活動が生じててんかんを発症することがある。この脳卒中後てんかん(post-stroke epilepsy;PSE)は、特に、高血圧の人に生じやすいと考えられている。しかし、新たな研究で、降圧薬のうち、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を使用している人では、他の降圧薬を使用している人に比べてPSEリスクがはるかに低いことが明らかになった。G・ダヌンツィオ大学(イタリア)てんかんセンターのGiacomo Evangelista氏らによるこの研究結果は、米国てんかん学会年次総会(AES 2024、12月6〜10日、米ロサンゼルス)で発表された。

 この研究では、脳卒中を経験した高血圧患者528人を対象に、降圧薬の種類とPSEとの関連が検討された。対象者の中に、研究開始時にてんかんの既往歴があった者は含まれていなかった。全ての対象者が何らかの降圧薬を使用しており、うち194人は2種類以上の降圧薬を使用していた。内訳は、β遮断薬が164人、カルシウム拮抗薬が159人、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬が154人、利尿薬が136人、ARBが109人であった。

 全体で38人(7.2%)がPSEを発症した。その多くは一種類の降圧薬を使用している人であった。解析の結果、ARB使用者に比べて、β遮断薬使用者では120%、カルシウム拮抗薬使用者では110%、ACE阻害薬使用者では65%、利尿薬使用者では60%、PSEリスクが高いことが示された。

 ARBは、血圧を上昇させる作用のあるホルモンであるアンジオテンシンIIが結合する受容体を遮断することで、その作用を抑制する。研究グループは、アンジオテンシンIIを阻害することで、炎症が軽減し、脳内の血流が改善し、それによりてんかん発作のリスクが軽減する可能性があると推測している。一方、カルシウム拮抗薬とβ遮断薬は、脳を過度に興奮させることで、またACE阻害薬は脳内の炎症を増加させることで、てんかん発作のリスクを高める可能性があるとの考えを示している。

 Evangelista氏は、「われわれの研究は、リアルワールドで、さまざまな降圧薬がPSEの予防にどの程度効果的であるかに焦点を当てた独自のものだ。どの降圧薬がPSEなどの合併症の予防に役立つかを理解することで、患者の転帰が改善される可能性がある」と話している。

 一方、共同研究者であるG・ダヌンツィオ大学てんかんセンターの神経学者であるFedele Dono氏は、「これらの研究結果は、特に脳卒中患者の血圧管理における個別化医療の重要性を浮き彫りにしている。得られた結果を確認し、その根底にあるより詳細なメカニズムを明らかにするには、より多くの患者を対象にした研究の実施が必要だ」と話している。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

[2024年12月9日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら