乳がんの予後に糖尿病が影響

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/04/11

 

 糖尿病の女性は乳がん発症リスクが高いことが知られているが、乳がんの予後にも糖尿病の影響が及ぶ可能性を示唆する研究結果が報告された。糖尿病がある場合、無遠隔転移生存期間や全生存期間が有意に短いという。順天堂大学大学院医学研究科乳腺腫瘍学の戸邉綾貴子氏、堀本義哉氏らの研究によるもので、詳細は「Breast Care」10月発行号に掲載された。

 糖尿病は多くのがんの発症リスクの高さと関連のあることが報告されており、そのメカニズムとして、インスリン抵抗性による高インスリン血症が、がんの発生を促すように働くことが想定されている。乳がんも糖尿病によって発症率が高くなるがんの一つ。ただ、乳がんの予後が糖尿病の有無によって異なるのか否かは明確になっていないことから、戸邉氏らはこの点を後方視的コホート研究により検討した。

 2006~2018年に乳がんに対する根治的手術を受けた患者(遠隔転移のあるステージ4以外の患者)のうち、解析に必要なデータがそろっていて、経過を1年以上追跡可能だった322人を解析対象とした。このうち106人(33%)が糖尿病を有していた。糖尿病群は非糖尿病群に比べて高齢で(67.6対61.5歳)、BMIが高い(26.8対23.8)という有意差があった(いずれもP<0.001)。また、糖尿病群は腫瘍径の大きい患者の割合が高かった(5cm未満と以上の比がP=0.040)。ただし、女性ホルモン受容体(ER)陽性の割合やヒト上皮成長因子受容体2遺伝子(HER-2)陽性の割合、術後補助化学療法の施行率は有意差がなかった。

 この対象に含まれていた、遠隔転移を起こし得る浸潤性乳がん患者296人を平均45カ月間(範囲2~147)追跡したところ、36人(12%)に遠隔転移が発生していた。そのうち16人が乳がんで死亡し、13人が乳がん以外の原因で死亡していた。

 無遠隔転移生存期間(DMFS)に関連する因子を検討したところ、単変量解析では腫瘍径、リンパ節転移、ERの状態、術後補助化学療法の有無とともに、糖尿病が有意に関連していた。それらを独立変数とする多変量解析では、腫瘍径〔ハザード比(HR)4.68(95%信頼区間2.13~10.32)〕と糖尿病〔HR2.27(同1.05~5.02)〕という2項目が、DMFSの短縮に関連する独立した因子として抽出された。また、全生存期間(OS)については多変量解析の結果、ER陽性のみがOS延長に有意に関連する因子という結果だった〔HR0.14(0.06~0.36)〕。

 次に、カプランマイヤー法でDMFSとOSを検討すると、糖尿病群はDMFSが有意に短く(P=0.036)、OSは有意差がなかった(P=0.115)。ただし、ER陰性のサブグループ解析では、DMFS(P=0.045)だけでなく、OS(P=0.029)も糖尿病群では有意に短いことが明らかになった。一方、ER陽性の場合は、DMFS、OSともに糖尿病の有無による有意差は見られなかった。

 続いて、糖尿病患者群を乳がん診断時のHbA1c7.0%未満/以上で層別化して検討すると、DMFS(P=0.732)、OS(P=0.568)ともに、HbA1cの高低による有意差は認められなかった。

 これらの結果を基に著者らは、「乳がん診断時に糖尿病を有していた患者は予後が悪く、特にER陰性の場合は予後への影響がより顕著だった」と総括している。また、糖尿病患者は予後が悪いにもかかわらず、HbA1cで層別化した検討ではDMFSやOSに有意差が示されなかったことから、「糖尿病の一次予防の重要性が再認識された」と考察を述べている。

[2023年3月27日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら