朝食を食べない成人は2型糖尿病のリスクが高いことが報告されているが、同じことが子どもにも当てはまるかもしれない。その可能性を示唆するデータが報告された。東京都足立区内の中学校の生徒を対象とした研究で、朝食欠食の習慣がある子どもは、交絡因子を調整後も糖尿病前症に該当する割合が有意に高かったという。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Endocrinology」に2月22日掲載された。
2型糖尿病は、あるとき突然発症する病気ではなく、血糖値が糖尿病の診断基準に至るほどではないものの基準値より高い状態、「糖尿病前症」(国内では糖尿病予備群とも呼ばれる)という段階を経てから発症する。つまり、糖尿病前症に該当する場合は、その後、2型糖尿病を発症するリスクが高い。一方、2型糖尿病の発症リスク因子としては、家族歴や食習慣の乱れ、運動不足、肥満などが知られている。これらのうち、食習慣の乱れの一つとして朝食の欠食が挙げられ、朝食欠食により遊離脂肪酸レベルの上昇に伴うインスリン抵抗性の亢進、消費エネルギー量の低下、概日リズムの乱れなどを介して糖代謝に悪影響が及ぶと考えられている。
実際に、朝食欠食と糖尿病や糖尿病前症との関連は成人対象の研究で示されている。ただし、小児については報告が少ない。海外からはいくつかの研究結果が報告されているが、関連性を肯定するものと否定するものが混在している。また、食習慣が糖代謝に及ぼす影響には人種差があることから、日本の子どもたちを対象とする研究が必要とされる。以上を背景として藤原氏らは、足立区内の小中学生対象に行われた「A-CHILD Study」の中学生のデータを用いて、朝食欠食と糖尿病前症リスクとの関連を検討した。
解析対象は、2016年、2018年、2020年の調査に回答した中学校7校の2年生、計2,090人から、データ欠落者、および、糖代謝レベルを判定するHbA1cへの影響を考慮して、貧血(ヘモグロビンが12g/dL未満)に該当する生徒を除外した1,510人。
朝食を「毎日食べる」と回答したのは83.6%で、残りの16.4%は「時々食べる」、「ほとんど食べない」、「全く食べない」であり、それらを朝食欠食群と定義した。糖尿病前症をHbA1c5.6~6.4%の場合と定義すると、3.8%が該当した。糖尿病の診断基準であるHbA1c6.5%以上の生徒はいなかった。
糖尿病前症の有病率は、朝食を毎日食べる群が3.5%、朝食を欠食する群では5.6%だった。多変量解析で性別、世帯収入、糖尿病の家族歴を調整後、朝食欠食群の生徒は毎日食べる生徒に比べて、糖尿病前症に該当する割合が2倍近く高いことが明らかになった〔オッズ比(OR)1.95(95%信頼区間1.03~3.69)〕。
BMIで層別化したサブグループ解析では、BMIが平均から1標準偏差以上上回っている生徒の場合(全体の15.1%)、朝食を欠食することと糖尿病前症に該当することに、より強固な関連のあることが分かった〔OR4.31(同1.06~17.58)〕。その一方、BMIの平均からの逸脱が1標準偏差未満の群では、朝食欠食による糖尿病前症の有意なオッズ比上昇は観察されなかった〔OR1.62(0.76~3.47)〕。
このほか、朝食欠食の習慣のある生徒は、起床時刻が遅く、平日の睡眠時間が長く、運動をする頻度が低いという有意差が見られた。なお、前記の多変量解析の調整因子に、起床時刻と運動頻度を追加した解析の結果も同様であり、朝食を欠食する生徒の糖尿病前症に該当する割合は約2倍だった〔OR2.01(1.04~3.89)〕。
著者らは本研究を、「アジア人の思春期児童で朝食の欠食と糖尿病前症との関連を検討した初の研究」と位置付けている。結論は、「糖代謝に影響を及ぼし得る交絡因子を調整後も、中学生の朝食の欠食は糖尿病前症に該当することと関連しており、この関連はBMIの高い生徒で顕著だった」とまとめられている。また、食習慣は中学生になるよりもさらに早い段階で身に付き、それが成人後に引き継がれる可能性が高いことから、「子どもが幼い頃から毎日朝食を食べさせるようにするための、保護者を対象とする介入が重要ではないか」との考察を付け加えている。
[2023年4月17日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら