アテローム硬化性頸動脈狭窄の治療において、頸動脈ステント留置術と頸動脈内膜切除術の長期的な脳卒中の予防効果は同等で、長期的な身体機能にも差はないことが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのLeo H Bonati氏らInternational Carotid Stenting Study(ICSS)の研究グループによる検討で明らかとなり、Lancet誌オンライン版2014年10月14日号で報告された。同研究グループはこれまでに、脳卒中の予防では手技に関連するリスクと長期的効果のバランスは内膜切除術のほうが良好だが、この差はステント留置術で後遺障害を伴わない軽度脳卒中が過度に多いことに起因し、長期的な身体機能の低下がステント留置術で多いとはいえず、これはとくに高齢者で顕著なことを明らかにしている。2010年、本試験の120日以内の安全性に関する中間解析の結果が報告されており、今回は最長10年に及ぶ長期的な有効性解析の結果が示された。
2つの治療法を無作為化試験で比較
ICSS試験は、症候性の頸動脈狭窄の治療におけるステント留置術と頸動脈内膜剥離術の有用性を比較する国際的な無作為化試験。対象は、年齢40歳以上、症候性のアテローム硬化性頸動脈狭窄により血管径が50%未満となり、2つの治療法の適応度が同程度と考えられる患者である。
被験者は、2つの治療群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。主要評価項目は、致死的脳卒中または後遺障害を伴う脳卒中(disabling stroke、修正Rankinスコア≧3)とし、intention-to-treat(ITT)解析(全例)およびper-protocol(PP)解析(治療完遂例)を行った。
判定は治療割り付け情報を知らされていない独立の審査委員会が行った。身体機能の評価には修正Rankin尺度が用いられた。フォローアップ期間は5年であったが、希望者は10年まで延長した。
背景因子に基づく手技関連リスクを考慮して選択
2001年5月~2008年10月までに、欧州、オーストラリア、ニュージーランド、カナダの50施設に1,710例(ITT集団)が登録され、ステント留置術群に853例、内膜切除術群には857例が割り付けられた。PP集団は1,563例(ステント留置術群752例、内膜切除術群811例)であった。フォローアップ期間中央値は4.2年。
ベースラインのステント留置術群の平均年齢は70歳、男性が70%で、狭窄の程度が50~69%の患者が11%、70~99%は89%、修正Rankinスコア≧3の患者は10%であり、内膜切除術群はそれぞれ70歳、71%、9%、91%、12%であった。
致死的脳卒中およびdisabling strokeの5年累積イベント発生数は、ステント留置群が52例、内膜切除術群は49例であり、両群で同等であった(ITT解析5年累積発生率:6.4 vs. 6.5%、ハザード比[HR]:1.06、95%信頼区間[CI]:0.72~1.57、p=0.77;PP解析同:3.4 vs. 4.3%、0.93、0.53~1.60)。
脳卒中全体のイベント発生数はステント留置群が119例であり、内膜切除群の72例に比べて有意に多かった(ITT解析5年累積発生率:15.2 vs. 9.4%、HR:1.71、95%CI:1.28~2.30、p=0.0003;PP解析同:8.9 vs. 5.8%、1.53、1.02~2.31、p=0.039)が、これらの多くはnon-disabling strokeであった。
1年、5年時および最終フォローアップ時の修正Rankinスコアは、いずれも両群間に有意な差を認めなかった。
著者は、「治療法の選択に当たっては、個々の患者の背景因子に基づき、それぞれの手技に関連するリスクを考慮すべき」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)