生体吸収性スキャフォールド、ABSORB IIIの結果/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2015/10/27

 

 エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールド(BVS)の有用性を検討した大規模な多施設共同無作為化試験の結果が報告された。非複雑性閉塞性冠動脈疾患(CAD)患者2,008例を対象に、エベロリムス溶出コバルトクロム合金ステントと比較した試験ABSORB IIIの結果、1年時点の標的病変不全の発生に関する非劣性が確認された。米国・クリーブランドクリニックのStephen G. Ellis氏らが報告した。金属製の薬剤溶出ステント埋設したCAD患者においては、有害事象として遅発性の標的病変不全が報告されている。金属製のステントフレームが血管壁に存在し続けることが関連している可能性があり、長期転帰を改善するためBVSが開発された。NEJM誌オンライン版2015年10月12日号掲載の報告。

薬剤溶出金属ステントと安全性、有効性を比較
 ABSORB III試験は、多施設共同単盲検実治療対照試験で、CAD患者に対するBVS(Absorb)の安全性と有効性を、薬剤溶出ステント(Xience)との比較において検討した。2013年3月19日~14年4月3日に、米国とオーストラリア202施設で1万3,789例について適格性の評価を行い、193施設2,008例の安定または不安定狭心症患者を、2対1の割合で無作為に2群に割り付けた(Absorb群1,322例、Xience群686例)。

 主要エンドポイントは、1年時点の標的病変不全(心臓死、標的血管領域の心筋梗塞、虚血による標的病変血行再建)で、非劣性と優越性の両者を評価した。

1年時点の標的病変不全発生について非劣性を確認
 1年時点の評価対象者は、1,989例(99.1%)であった。両群の入院中または30日時点での抗血小板薬2剤併用療法の使用について有意な差はなかった。1年時点では、Xience群と比べてAbsorb群は、クロピドグレルの使用頻度は低く、プラスグレルの使用頻度が高かった。

 結果、主要エンドポイントの発生は、Absorb群7.8%、Xience群6.1%であった(両群差:1.7ポイント、95%信頼区間[CI]:-0.5~3.9、非劣性p=0.007、優越性p=0.16)。

 項目別にみると、心臓死Absorb群0.6%、Xience群0.1%(それぞれp=0.29)、標的血管心筋梗塞6.0%、4.6%(それぞれp=0.18)、虚血による標的病変血行再建3.0%、2.5%(それぞれp=0.50)であった。

 1年間のデバイス血栓症の発生は、Absorb群1.5%、Xience群0.7%であった(p=0.13)。

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コメンテーター : 中川 義久( なかがわ よしひさ ) 氏

滋賀医科大学 循環器内科 教授

J-CLEAR評議員