閉経後のホルモン受容体陽性非浸潤性乳管がん(DCIS)で、乳腺腫瘤摘出術と放射線療法を行った患者に対するアナストロゾール(商品名:アリミデックスほか)投与は、タモキシフェン(同:ノルバデックスほか)投与に比べ、有意な再発予防効果が認められたことが報告された。両者の差は5年を過ぎてから確認され、また60歳未満患者に対してアナストロゾールの有意な治療効果が認められた。カナダ・マギル大学のRichard G. Margolese氏らが実施した無作為化二重盲検試験、National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project(NSABP)B-35試験の結果、示された。現在、DCISに対する標準治療は、腫瘤を切除後、放射線療法および補助療法(通常タモキシフェン)とされている。研究グループは、補助療法としてアナストロゾールがより安全で、効果があるのではないかとして、両者を比較する検討を行った。Lancet誌2015年12月10日号掲載の報告。
3,104例を無作為化、タモキシフェンまたはアナストロゾールを5年投与
NSABP B-35試験は米国・カナダの333ヵ所の医療機関を通じて、閉経後ホルモン受容体陽性DCISで、十分な切除マージンによる乳腺腫瘤摘出術を行い全乳房照射の放射線療法を受けた患者を対象に実施された(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。
2003年1月1日~06年6月15日にかけて、適格患者3,104例が登録された。被験者は、タモキシフェン20mg/日を(1,552例)、または経口アナストロゾール1mg/日を(1,552例)、それぞれ5年間投与する群に無作為に割り付けられた。また60歳未満、60歳以上に層別化された。
主要評価項目は、乳がん無発症期間で、無作為化からあらゆる乳がん(局所、領域、遠隔部位、対側乳房)再発までの期間と定義した。
追跡期間9.0年、アナストロゾールの効果を確認、とくに60歳未満で有意差
2015年2月末の追跡期間中央値9.0年の時点で追跡可能だったのは、全生存率については3,083例、乳がん無発症期間については3,077例だった。
その間の乳がん再発例は合計212例で、タモキシフェン群122例、アナストロゾール群90例で、アナストロゾール群で有意に減少した(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.56~0.96、p=0.0234)。10年乳がん無発症だった患者の推定割合は、タモキシフェン群89.1%、アナストロゾール群93.1%で、こうした両群差がみられるようになったのは60ヵ月(5年)を過ぎてからで、有意な治療期間の相互作用が確認された(p=0.0410)。
また、治療と年齢間にも有意な相互作用が認められた。アナストロゾール治療は60歳未満(対タモキシフェン群のHR:0.53、95%CI:0.35~0.80、p=0.0026)に対するほうが、65歳以上(同:0.95、0.66~1.37、p=0.78)よりも優れることが判明した(p=0.0379)。
なお、有害事象の発生について全体では両群間で有意差はみられなかったが、タモキシフェンの有害作用として知られる血栓症や塞栓症について、総計では同等であったが(タモキシフェン群97%、アナストロゾール群99%)、命の危険に関わるGrade4以上の発生例はタモキシフェン群17例に対しアナストロゾール群は4例だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)