日本人対象の大規模前向きコホート研究の結果、食事のバランスが良い人ほど、全死因死亡リスクや心血管・脳血管疾患死リスクが低いことが明らかにされた。国立国際医療研究センターの黒谷佳代氏らが、約8万人を中央値15年追跡した結果で、BMJ誌オンライン版2016年3月22日号で発表した。これまでに欧米人を対象に、より良い食事摂取が死亡リスクや主要慢性疾患リスクを低下することを示した試験結果はあるものの、アジア人を対象にした前向き試験は珍しいという。
食事バランスガイド順守度と死亡率の関連を検証
研究グループは、1990年または1993年より、全国11ヵ所の保健所を中心に45~75歳の男性3万6,624人と女性4万2,970人について、中央値15年にわたる前向きコホート試験を行った。被験者は、がんや脳卒中、虚血性心疾患、慢性肝疾患の病歴がいずれも認められなかった。
農林水産省が作成した「食事バランスガイド」の順守度と、全死因死亡率の関連を検証した。具体的には、被験者の同ガイド順守度を0~70までスコア化し、低いほうから4群に分類し、死亡率との関係を調べた。食事バランスガイドは、食事内容をご飯やパンなどの「主食」、野菜やきのこ類などの「副菜」、肉や魚などの「主菜」、「乳製品」、「果物」の5つのカテゴリーに分類し、いずれもバランス良く摂取するよう推奨している。
順守度最高群は、最低群に比べ死亡リスクは15%減少
その結果、同ガイド順守度が高スコア群ほど全死因死亡率は低くなることが示された。多変量補正後ハザード比(HR)は、最低スコア(第1分位)を1とした場合、第2分位群が0.92(95%信頼区間[CI]:0.87~0.97)、第3分位群が0.88(同:0.83~0.93)、最高スコア(第4分位)群は0.85(同:0.79~0.91)だった(傾向p<0.001)。
食事バランスガイドの順守スコアが10ポイント増大することで、死亡リスクは約7%低下した(補正後HR:0.93、95%CI:0.91~0.95、傾向p<0.001)。
心血管疾患死リスクについても、同スコアの10ポイント増大につき、約7%の低下が認められた(同:0.93、0.89~0.98、傾向p=0.005)。とくに脳血管疾患死リスクについては、約11%の低下がみられた(同:0.89、0.82~0.95、傾向p=0.002)。
また、がん死亡リスクについても、同スコアの増加によるリスクの減少は認められたが、有意差には至らなかった(同:0.96、0.93~1.00、傾向p=0.053)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)