TAVR後の大動脈弁閉鎖不全症、2つの予測因子/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2016/08/05

 

 フォンウィルブランド因子(VWF)の高分子量マルチマーの欠損の存在と、アデノシン二リン酸被覆カートリッジの血栓形成による閉塞までの時間(closure time:CT-ADP)の延長は、いずれも経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)後の大動脈弁閉鎖不全症(AR)の予測因子であり、術後1年時の死亡率高値と関連していることが明らかとなった。フランス・リール大学病院センターのE. Van Belle氏らが、高分子量VWFマルチマーの評価あるいは血小板機能分析器(PFA-100)を用いた止血のポイントオブケア検査によりTAVR中のARをモニタリングできる、という仮説を検証する目的でコホート研究を行い、結果を報告したもの。大動脈弁狭窄症に対するTAVRを受ける患者の10~20%は術後ARを発症する。TAVR術後ARはただちに修復可能なので術中に検出することが望ましいが、実際には困難で、迅速かつ確実なスクリーニング法の開発が求められていた。NEJM誌2016年7月28日号掲載の報告。

TAVR施行患者で、術中に高分子量VWFマルチマーと血小板機能を評価
 研究グループは、2012年8月~2014年4月にリール大学病院でTAVRを受ける183例を第1コホートとして登録した。初回TAVR後に経食道心エコー検査でARが確認された患者には、バルーン拡張術が追加された。ベースラインおよびTAVRの各段階の5分後に、高分子量VWFマルチマーの定量と、PFA-100を用いたCT-ADP測定が行われた。また、術後1年時の死亡率を評価した。
 さらに、第2コホートとして201例を登録し、CT-ADPによるAR同定の妥当性を検証した。

高分子量VWFマルチマー比率とCT-ADP値が術後ARおよび術後1年死亡率と関連
 初回TAVR後、ARが確認されなかった患者137例では高分子量VWFマルチマー比率が正常化した。ARが確認された患者46例においては、追加施行のバルーン拡張術が成功した20例では同比率が正常化したが、ARが持続した26例では正常化しなかった。高分子量VWFマルチマー比率の最適閾値は0.8で、感度92.3%、特異度94.9%、陰性的中率98.7%であった。
 CT-ADPも同様の結果であった。ARを検出するCT-ADP値は180秒以上で、感度92.3%、特異度92.4%、陰性的中率は98.6%であった。検証コホートでもそれぞれ83.3%、92.4%、および96.9%と類似の結果であった。
 1年の追跡期間中、33例(18%)が死亡した。多変量解析の結果、TAVR終了時の高分子量VWFマルチマー比率ならびにCT-ADP値が、1年時の死亡率と関連していることが示された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)