非心臓手術後ICU入室の65歳超高齢患者に対して、α2作動性鎮静薬デクスメデトミジン(商品名:プレセデックス)を予防的に低容量で行う静注投与は、術後のせん妄発症を有意に抑制することを、中国・北京大学第一医院のXian Su氏らが無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。せん妄は、65歳超高齢患者において頻度の高い術後合併症であり、有害アウトカムに結び付きやすいが、700例を対象とした今回の検討において、7日時点の投与群のプラセボ群に対するオッズ比(OR)は0.35であり、安全性も確認されたという。著者は、「ただし、長期的アウトカムへの改善に結び付くかは不明のままである」と指摘し本報告をまとめている。Lancet誌オンライン版2016年8月16日号掲載の報告。
65歳以上の非心臓手術ICU入室者を対象に、プラセボ対照試験
検討は、北京にある2つの3次医療病院で行われた。65歳以上、非心臓手術でICUに入室した患者を、インフォームド・コンセントを行い登録した。コンピュータを用いた無作為化シーケンス法で、被験者を無作為に2群に1対1に割り付けた。一方の群には、デクスメデトミジンまたはプラセボ(生理食塩水)を投与した。デクスメデトミジンは、投与速度0.025mL/kg/時(0.1μg/kg/時)で、手術当日の試験登録(通常ICU入室後1時間以内に手術)から、術後翌日(1日目)の午前8時まで持続静注された。
試験参加者、ケア従事者、治験担当者は、割り付けを知らされなかった。
主要エンドポイントはせん妄の発症で、術後初期7日間、ICUで1日2回(午前8~10時の朝、午後6~8時の夕方)、Confusion Assessment Methodを用いて評価した。解析はintention-to-treat法にて、安全性集団も設定して評価した。
術後7日時点のせん妄発症、投与群のオッズ比は0.35
2011年8月17日~2013年11月20日に、2,016例がスクリーニングを受け、計700例がデクスメデトミジン群(350例)とプラセボ群(350例)に無作為に割り付けられた。
せん妄の発症は、デクスメデトミジン群(32/350例、9%)が、プラセボ群(79/350例、23%)よりも有意に低率であった(OR:0.35、95%信頼区間[CI]:0.22~0.54、p<0.0001)。
安全性に関しては、高血圧症の発症は、プラセボ群(62/350例、18%)のほうがデクスメデトミジン群(34/350例、10%)よりも有意に高率であった(OR:0.50、95%CI:0.32~0.78、p=0.002)。また、頻脈の発生頻度も、プラセボ群(48/350例、14%)がデクスメデトミジン群(23/350例、7%)よりも有意に高率であった(OR:0.44、95%CI:0.26~0.75、p=0.002)。低血圧症、徐脈については両群間で有意差はなかった。