高齢の閾値下うつ病、協働ケアで改善/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2017/03/06

 

 高齢の閾値下うつ病患者の治療において、協働ケア(collaborative care)は通常ケアに比べ、うつ症状を短期的に改善する可能性があることが、英国・ヨーク大学Simon Gilbody氏らが行ったCASPER試験で示された。英国では、閾値下うつ病の1次治療における抗うつ薬の有効性のエビデンスはほとんどないため推奨されておらず、心理療法は高強度の治療形態として、より重度の病態の治療として留保されるのが一般的だという。協働ケアは、メタ解析で閾値を満たすうつ病への効果が示されている。JAMA誌2017年2月21日号掲載の報告。

プライマリ・ケアでの有効性を通常ケアと比較
 CASPER試験は、閾値下うつ病の高齢患者を対象に、プライマリ・ケアにおける協働ケアによる介入の、症状緩和および重症化の予防効果を評価するプラグマティックな多施設共同群間並行無作為化試験(英国国立衛生研究所[NIHR]医療技術評価プログラムの助成による)。

 対象は、年齢65歳以上、標準化された簡易2項目質問法(brief 2-item case-finding tool)でうつ症状がみられ、精神疾患簡易構造化面接法(MINI ver. 5.0)でDSM-IV基準の閾値下うつ病と診断された患者であった。

 被験者は、協働ケアを受ける群または通常のプライマリ・ケアを受ける群に無作為に割り付けられた。協働ケアは、気分症状に関連する機能障害の評価を行うケースマネジャーが調整した。患者は行動活性化プログラムに参加し、週1回の研修を平均6回受けた。ケースマネジャーは、必要に応じてプライマリ・ケア医や精神科医の指導を受けた。

 主要評価項目は、フォローアップ期間4ヵ月時の患者報告によるうつ病の重症度とし、患者健康質問票(PHQ)-9スコア(0~27点、点が高いほどうつ病が重度)で評価した。

 2011年5月24日~2014年11月14日に、英国の32のプライマリ・ケア施設に705例が登録された。協働ケア群に344例が、通常ケア群には361例が割り付けられた。

評価項目は全般に優れるが、試験参加維持率が低い
 ベースラインの全体の平均年齢は77(SD 7.1)歳、女性が58%を占めた。平均PHQ-9スコアは、協働ケア群が7.8(SD 4.71)、通常ケア群は7.8(SD 4.64)だった。4ヵ月時までに協働ケア群の24%(82/344例)、通常ケア群の10%(37/361例)がフォローアップできなくなり、試験参加維持率は83%だった。主要評価項目の解析は、それぞれ274例、327例で行われた。

 4ヵ月時の平均PHQ-9スコアは、協働ケア群が5.36点と、通常ケア群の6.67点に比べ有意に低かった(平均差:-1.31、95%信頼区間[CI]:-1.95~-0.67、p<0.001)。この差は、12ヵ月時にも保持されていた(5.93 vs.7.25点、平均差:-1.33、95%CI:-2.10~-0.55、p=0.001)。

 4ヵ月時までにうつ病基準(PHQ-9スコア≧10点)を満たした患者(新規にうつ病と診断された患者)の割合は、協働ケア群が17.2%(45/262例)、通常ケア群は23.5%(76/324例)であり、有意な差は認めなかった(差:-6.3%、95%CI:-12.8~0.2、相対リスク[RR]:0.83、95%CI:0.61~1.27、p=0.25)が、12ヵ月時には協働ケア群が有意に低かった(15.7 vs.27.8%、差:-12.1%、95%CI:-19.1~-5.1、RR:0.65、95%CI:0.46~0.91、p=0.01)。

 抗うつ薬の使用率は、4ヵ月時(9.9 vs.14.3%、RR:0.73、p=0.08)、12ヵ月時(9.8 vs.15.7%、RR:0.84、p=0.33)とも両群に差はなかった。また、健康関連QOLの評価では、SF-12の身体機能(4ヵ月時:p<0.001、12ヵ月時:p=0.02)および心の健康(4ヵ月時:p=0.009、12ヵ月時:p=0.007)が、いずれも協働ケア群で有意に良好であった。

 不安症状の評価では、全般性不安障害評価尺度(GAD-7)が、4ヵ月時(p<0.001)、12ヵ月時(p=0.001)とも、協働ケア群で良好だった。また、12ヵ月間に、協働ケア群の5例(1.5%)、通常ケア群の18例(5.0%)が死亡し、有意な差がみられた(p=0.008)。

 著者は、「協働ケアの効果は12ヵ月時も持続していたが、症例の減少率が高いため結果の信頼性には限界があり、長期的な効果の評価にはさらなる研究を要する」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 岡村 毅( おかむら つよし ) 氏

東京都健康長寿医療センター

上智大学

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