頭部外傷の小児において、CT検査の適応を臨床的に判断する3つのルール(PECARN、CATCH、CHALICE)は、デザインされたとおりに使用された場合の感度は高いことが、オーストラリア・王立小児病院のFranz E Babl氏らが行った前向きコホート研究(APHIRST)による検証の結果、明らかになった。これら3つのルールは、CT検査を行うべき頭部外傷患児の同定に役立つが、これまで外部検証や多施設大規模比較試験は行われていなかった。著者は、「今回の結果は、ルールの導入を検討している医師にとって、重要な出発点となる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年4月11日号掲載の報告。
頭部外傷小児約2万例で、3つのルールの診断精度を検証
APHIRST(Australasian Paediatric Head Injury Rules Study)は、2011年4月11日~2014年11月30日に、オーストラリアおよびニュージーランドの10病院において行われた。対象は、救急診療部を受診した18歳未満のあらゆる重症度の頭部外傷患者で、PECARN(2歳以上と2歳未満で層別化)、CATCH、CHALICEの各ルールに特異的な転帰(それぞれ、臨床的に重大な外傷性脳損傷[TBI]、神経学的介入の必要性、臨床的に重大な頭蓋内損傷)を予測する診断精度を評価した。
検証コホートで、ルールごとに選択基準および除外基準を満たした集団においてルール特有の予測変数を算出。2次解析では、軽度頭部外傷患者(グラスゴー・コーマ・スケール[GCS]:13~15)を対象とした比較コホートにおいて、ルール特有の予測変数を用いて臨床的に重大なTBIの診断精度を算出・評価した。
感度はPECARNが優れるものの3つのルールで診断精度に差はない
計2万137例が解析され、このうちCT検査が行われたのは2,106例(10%)、入院は4,544例(23%)、脳神経外科手術施行83例(<1%)、死亡15例(<1%)であった。PECARNは、2歳未満5,374例中4,011例(75%)、2歳以上1万4,763例中1万1,152例(76%)、CATCHは4,957例(25%)、CHALICEは2万29例(99%)に適用された。
検証コホートの解析において、感度が最も高かったのは、2歳未満に対するPECARN(感度100.0%、95%信頼区間[CI]:90.7~100.0、38/38例)、ならびに2歳以上に対するPECARN(99.0%、95%CI:94.4~100.0、97/98例)であり、次いでCATCH(高リスク予測因子のみ:95.2%、95%CI:76.2~99.9、20/21例/高リスクと中等度リスク予測因子:88.7%、95%CI:82.2~93.4、125/141例)、CHALICE(92.3%、95%CI:89.2~94.7、370/401例)の順であった。
軽度頭部外傷患者1万8,913例を対象とした比較コホートの解析において、臨床的に重大なTBIの感度は同等であった。両解析における陰性的中率は、3ルールすべて99%以上であった。
なお、著者は、「PECARNの主要評価項目である臨床的に重大なTBIを、評価項目として用いたため、PECARNルールに好ましい結果に偏った可能性がある」と指摘している。
(医学ライター 吉尾 幸恵)