1型糖尿病患者への網膜症スクリーニングについて、当初の網膜症の程度と平均糖化ヘモグロビン値を鑑みることで、適切な実施頻度が明らかになった。現在、同患者には毎年の広角眼底検査が推奨されているが、それに比べて検診の頻度は約6割少なく済み、コスト削減にもつながるという。「糖尿病のコントロールと合併症に関する試験」(DCCT試験)とその長期追跡試験「糖尿病への介入と合併症に関する疫学試験」(EDIC試験)に参加した米国・マサチューセッツ総合病院のDavid M Nathan氏らDCCT/EDIC研究グループが、両試験結果に基づくモデルを検証した結果で、NEJM誌2017年4月20日号で発表した。
Markovモデルで増殖糖尿病網膜症などへの進行リスクを予測
研究グループは、DCCT/EDIC試験参加者の眼底写真を用いることで、理に適った網膜症スクリーニングの頻度を明らかにする検討を行った。DCCT/EDIC試験では、30年にわたり、1型糖尿病患者を対象とした糖尿病網膜症スクリーニングの眼底写真撮影を6ヵ月~4年間隔で実施した。
その結果から、当初の網膜症の程度(網膜症なし、非増殖網膜症[軽症・中等症・重症])によって患者を分類。増殖糖尿病網膜症または臨床的に重要な黄斑浮腫に進行する確率を、Markovモデルを用いて確定した。同モデルには、網膜症の進行に関連する既知のリスク因子を盛り込んだ。
眼検診頻度は58%減少、大幅コスト削減に
全体として、増殖糖尿病網膜症または臨床的に重要な黄斑浮腫に進行する確率は、「網膜症なし・4年間隔」「軽症・3年間隔」「中等症・6ヵ月間隔」「重症・3ヵ月間隔」の患者モデル(当初の程度とスクリーニングを受けた間隔)では、いずれも約5%にとどまった。
しかし、より詳細な患者特性を反映したモデルで、増殖糖尿病網膜症または臨床的に重要な黄斑浮腫に進行するリスクが、平均糖化ヘモグロビン値と密接に関連していることが明らかになった。具体的には、「網膜症なし・糖化ヘモグロビン値6%」の患者の進行リスクは5年間で1.0%だったが、「網膜症なし・糖化ヘモグロビン値10%」の患者では3年間で4.3%だった。
研究グループは、「エビデンスに基づく実用的な計画によって、眼検診の頻度はルーチンの毎年の検査と比較して、20年間で58%低下し、大幅なコスト削減につながった」と述べている。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)