人工心肺装置を用いた冠動脈バイパス術(CABG)実施予定で、左室駆出分画率が40%以下の患者に対し、levosimendanを術前投与しても、術後アウトカムは改善しないことが示された。フランス・ジョルジュ・ポンピドゥー欧州病院のBernard Cholley氏らが、336例を対象に行ったプラセボ対照無作為化二重盲検試験「LICORN」の結果を報告したもので、JAMA誌2017年8月8日号で発表した。心臓手術後の低心拍出量症候群は、左室機能障害を有する患者で高い死亡率と関連している。
術前にlevosimendanを24時間注入
研究グループは2013年6月~2015年5月にかけて、フランス国内13ヵ所の心臓外科センターを通じ、左室駆出分画率が40%以下で、人工心肺装置を用いた単独または弁置換術と同時CABGを実施予定の患者336例を対象に試験を行った。
被験者を無作為に1対1の割合で2群に分け、術前の麻酔誘発前に、一方の群にはlevosimendan(0.1μg/kg/分)を、もう一方の群にはプラセボを24時間投与し、術後6ヵ月間追跡した。
主要複合エンドポイントは、次のいずれかとした。(1)levosimendan投与開始後48時間以降にカテコラミン注入を必要とする、(2)術後に左室補助人工心臓を要する、または術前に挿入した場合にはlevosimendan投与開始後96時間に離脱できない状態、(3)術後集中治療室滞在期間に腎代替療法を必要とする。
同グループは、levosimendan群の主要複合エンドポイントの発生リスクは15%低減すると仮定した。
エンドポイント発生率は両群で同等
被験者の平均年齢は68歳、女性は16%。試験を終了したのは333例だった。解析には、levosimendan群167例、プラセボ群168例が包含された。
主要複合エンドポイントの発生率は、プラセボ群61%(101例)、levosimendan群52%(87例)と、両群間で有意な差は認められなかった(センターエフェクトを補正後の絶対リスク差:-7%、95%信頼区間[CI]:-17~3、p=0.15)。
事前に規定したサブグループ解析でも、左室駆出分画率30%未満、手術のタイプ別、術前のβ遮断薬の服用、動脈内バルーンポンプの使用、カテコラミン投与のいずれについても、アウトカムとの関連は認められなかった。著者は、「これら指標について、levosimendanの使用を指示しないものであった」とまとめている。
なお、低血圧(57% vs.48%)、心房細動(50% vs.40%)、およびその他の有害事象の発生率は両群で有意差はみられなかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)