黒人が経営する理髪店で、顧客のコントロール不良高血圧の黒人男性に対し、専門的訓練を受けた薬剤師が、顧客の医師と協力して降圧治療を行った結果、半年後の収縮期血圧値が大幅に低下したことが示された。米国・シダーズ・サイナイ医療センターのRonald G. Victor氏らが、黒人経営の理髪店52ヵ所を通じて高血圧症の黒人319例を対象に行ったクラスター無作為化試験の結果で、NEJM誌オンライン版2018年3月12日号で発表された。非ヒスパニック系黒人のコントロール不良高血圧は重大な問題とされているが、従来のヘルスケア設定での薬剤師介入試験では、そうした人々が対象集団に含まれる割合が実際よりも少ないという課題があった。
6週間に1回以上理髪店に来る上顧客を対象に試験
研究グループは、黒人が経営する理髪店52ヵ所の顧客で、収縮期血圧値が140mmHg以上の35~79歳の黒人男性319例を対象に試験を行った(女性と透析および化学療法を受けている顧客は除外)。被験者は、半年以上にわたり6週間に1回以上の頻度で散髪に来ている上顧客だった。
検討では理髪店を無作為に2群に分け、一方では理容師が被験者に対し、店内での薬剤師による定期的な面談を推奨。薬剤師は高血圧症の治療に関する特別な訓練を受け、被験者の医師と協力して処方薬治療を行った(介入群)。また、薬剤師は理髪店で定期的に患者と面談をし、血圧測定やライフスタイルの改善についても指導を行った。
もう一方の群では、訓練を受けた理容師が、被験者に対しライフスタイルの改善や医師の診察を勧めた(対照群)。
主要評価項目は、6ヵ月後の収縮期血圧値の低下だった。
半年後の収縮期血圧値低下幅の差は21.6mmHg
被験者のベースラインの収縮期血圧値は、介入群が平均152.8mmHg、対照群が平均154.6mmHgだった。
6ヵ月時点で、対照群の平均収縮期血圧値は145.4mmHgと、平均9.3mmHg低下したのに対し、介入群の平均収縮期血圧値は125.8mmHgと平均27.0mmHg低下した。平均低下幅の群間差は、21.6mmHg(95%信頼区間[CI]:14.7~28.4、p<0.001)だった。
収縮期/拡張期血圧値が130/80mmHg未満を達成した人の割合も、対照群が11.7%だったのに対し、介入群は63.6%と有意に高率だった(p<0.001)。
なお、介入群の継続率は95%で、有害事象は急性腎不全が3例で認められた。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)