ICU入室の消化管出血リスクがある成人患者において、プロトンポンプ阻害薬(PPI)のpantoprazole投与は、プラセボ投与と比較して、90日死亡率および臨床的に重要なイベント数が同程度であった。デンマーク・Copenhagen Trial UnitのMette Krag氏らによる多施設共同の層別化並行群プラセボ対照盲検試験の結果で、NEJM誌オンライン版2018年10月24日号で発表された。ICU入室患者に対して、消化管ストレス潰瘍の予防的処置はしばしば行われている。しかし、そのリスクとベネフィットは明らかではない。
欧州33のICUでプラセボ対照試験
試験は、2016年1月4日~2017年10月22日に、欧州(デンマーク、フィンランド、オランダ、ノルウェー、スイス、英国)の33のICUで行われた。急性症状でICUに入室した消化管出血リスクがある成人患者を、ICU入室期間中に毎日pantoprazole 40mgの静脈内投与を受ける群またはプラセボを受ける群に無作為に割り付けた。
主要評価項目は、無作為化後90日までの死亡であった。
90日死亡率、PPI群31.1%、プラセボ群30.4%で有意差なし
3,298例が登録され、1,645例がpantoprazole群に、1,653例がプラセボ群に無作為に割り付けられた。このうち主要評価項目のデータは、3,282例(99.5%)から入手できた。ベースラインの患者特性は両群間で類似しており、各群の患者のICU入室期間中央値は6日(各群の四分位範囲:4~11)で、各群の試験薬投与期間中央値は4日(同:2~9)であった。試験薬投与中断例は、pantoprazole群274/1,644例(16.7%)、プラセボ群319/1,647例(19.4%)であった。
無作為化後90日で、pantoprazole群510例(31.1%)、プラセボ群499例(30.4%)が死亡した(相対リスク:1.02、95%信頼区間[CI]:0.91~1.13、p=0.76)。この結果は、ベースラインのリスク因子補正後、およびper-protocol集団解析でも類似していた。
ICU入室期間中、1件以上の臨床的に重要なイベント(臨床的に重要な消化管出血、肺炎、クロストリジウム・ディフィシル感染、心筋虚血の複合)の発生率は、pantoprazole群21.9%、プラセボ群22.6%であった(相対リスク:0.96、95%CI:0.83~1.11)。臨床的に重要な消化管出血は、pantoprazole群2.5%に対し、プラセボ群4.2%の発生であった。感染症または重篤有害反応を有した患者数、90日以内の生命維持なしでの生存日数の割合は、両群で同程度であった。
(ケアネット)