世界中で、医師の燃え尽き症候群(バーンアウト)の罹患率は高いことが報告されている。余暇活動は健康で安心して暮らせる環境をもたらすが、医師の余暇活動の現況はよくわかっていないという。米国・ハーバード大学医学大学院のGal Koplewitz氏らは、今回、ゴルフの普及状況を調査し、米国の男性医師は一般的にゴルフに興じており、とくに外科医が多いことを明らかにした。ゴルフは、多くの医師にとってステレオタイプの娯楽だが、これまで専門科別の普及率や腕前、男女差については検討されておらず不明であった。BMJ誌2018年12月10日号(クリスマス特集号)掲載の報告。
米国医師のゴルフパターンを調査
研究グループは、米国の医師がゴルフを行うパターンの調査を目的に観察研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。
米国の医師の包括的なデータベースを、米国ゴルフ協会のアマチュアゴルファーのデータベースと関連付けた。2018年8月1日の時点で、米国ゴルフ協会のデータベースに、実際にゴルフのラウンドの記録があった医師を解析の対象とした。
主要評価項目は、ゴルフを行う医師の割合、技量(ゴルフハンディキャップ指数で評価、数値が低いほど技量が高い)、頻度(過去6ヵ月のゴルフのゲーム数)であった。
102万9,088人の医師のうち、米国ゴルフ協会のアマチュアゴルファーデータベースに、実際にゴルフのスコアの記載があったのは4万1,692人(4.1%)であった。
女性は約1割、整形外科医が多く、血管外科医の技量が高い
医師ゴルファーの89.5%が男性で、女性医師は10.5%であった。全男性医師の5.5%(3万7,309/68万3,297人)がゴルフをしていたのに比べ、全女性医師に占めるゴルファーの割合は1.3%(4,383/34万5,489人)と少なかった。
医師ゴルファーは、61~70歳の男性(6.9%)が最も多く、31~35歳の女性(0.8%)が最も少なかった。男性医師ゴルファーの平均年齢は55.2歳(中央値56歳、IQR:46~64)だった。
専門科別のゴルフ普及率および技量にはばらつきがみられた。医師ゴルファーの割合が最も高かった専門科は整形外科(8.8%)で、次いで泌尿器科(8.1%)、形成外科(7.5%)、耳鼻咽喉科(7.1%)、血管外科(6.9%)、眼科(6.7%)の順であり、最も低かったのは内科(2.9%)および感染症科(2.9%)であった。
平均ハンディキャップは、全体では16.0であり、男性医師は15.0、女性医師は25.2であった。専門科別では、血管外科(14.7)が最も低く、技量が最も高いと判定された。次いで、胸部外科(14.8)、整形外科(14.9)、麻酔科(15.0)、救急医療科(15.0)の順であった。最も技量が低かった専門科は内分泌科(18.1)で、次いで皮膚科(17.2)および腫瘍科(17.2)であった。上位の3科は、下位3科に比べ約15%技量が優れた。
専門科別のゴルファーの割合とハンディキャップには負の相関が認められ、技量が高い専門科ほどゴルファーが多かった(p=0.002)。
2018年の前半6ヵ月で、男性医師ゴルファーは平均14.8回ゲームをしていた。女性医師ゴルファーは12.1回であった。医師レベルでは、ゲーム数とハンディキャップには負の相関がみられ、技量の高い医師ほど、頻回にゴルフをしていた(p=0.004)。
著者は、「今後、医師のゴルフと患者アウトカム、治療費、医師の安寧(wellbeing)との関連を検討する必要がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)