腹部大動脈瘤患者の長期生存は、血管内治療と開腹手術とで類似しているが、再治療を受けた患者の割合は血管内治療のほうが多いことが、米国・Veterans Affairs(VA) Medical CenterのFrank A. Lederle氏らによる多施設共同無作為化試験「Veterans Affairs(VA) Open versus Endovascular Repair(OVER)試験」の長期追跡の結果、示された。腹部大動脈瘤に対する待機的血管内治療は、従来の開腹手術と比較して周術期死亡率を低下させるが、4年後の生存には差がない。また、欧州で行われたEVAR-1試験およびDREAM試験では、血管内治療のほうが開腹手術よりも再治療が多いなど長期転帰が不良であることが示唆されていたが、10年以上前に実施したOVER試験の長期転帰については報告されていなかった。NEJM誌2019年5月30日号掲載の報告。
腹部大動脈瘤患者約880例を無作為化、最長14年間追跡
研究グループは、2002年10月~2008年4月に無症候性腹部大動脈瘤患者881例を、血管内治療群(444例)または開腹手術群(437例)に無作為に割り付け、2016年12月31日まで、最長14年間追跡した。
2011年10月15日までは定期的に追跡調査を行ったが、以降は米国内のデータベースを用いて調査した。
主要評価項目は全死因死亡で、intention-to-treat解析にて評価した。
全死因死亡に有意差なし、再治療は血管内治療群で多い
総死亡は、血管内治療群302例(68.0%)、開腹手術群306例(70.0%)であった(ハザード比[HR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.82~1.13)。全死因死亡率は、治療後最初の4年間では血管内治療群のほうが開腹手術群よりも低い傾向がみられたが、4~8年目では開腹手術のほうが低く、8年以降では再び血管内治療群のほうが低かった(8年以降における死亡に関するハザード比:0.94、95%CI:0.74~1.18)。なお、いずれの傾向にも統計学的有意差はなかった。
動脈瘤関連の死亡は、血管内治療群で12例(2.7%)、開腹手術群で16例(3.7%)確認され(群間差:-1.0ポイント、95%CI:-3.3~1.4)、そのほとんどは周術期に発生していた。血管内治療群では動脈瘤破裂が7例(1.6%)、開腹手術群では胸部大動脈瘤破裂が1例(0.2%)確認された(群間差:1.3ポイント、95%CI:0.1~2.6)。慢性閉塞性肺疾患による死亡は、開腹手術群のほうが約50%高頻度であった(血管内治療群5.4% vs.開腹手術群8.2%、群間差:-2.8ポイント、95%CI:-6.2~0.5)。血管内治療群で、再治療を受けた患者が多かった(26.7% vs.19.8%、群間差:6.9ポイント、95%CI:2.0~17.5)。