家族性高コレステロール血症患児へのスタチン、成人期の心血管リスク低減/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2019/10/28

 

 小児期にスタチン治療を開始した家族性高コレステロール血症患者は、成人期の頸動脈内膜中膜肥厚の進行が抑制され、心血管疾患のリスクが低減することが、オランダ・アムステルダム大学医療センターのIlse K. Luirink氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年10月17日号に掲載された。家族性高コレステロール血症は、LDLコレステロール値の著しい増加と心血管疾患の早期発症を特徴とする。小児へのスタチン治療の短期的効果は確立されているが、心血管疾患リスクの変動を評価した長期的な追跡研究は少ないという。

20年後に、患児を非罹患同胞および罹患親と比較
 研究グループは、家族性高コレステロール血症小児患者へのスタチン治療に関する20年間の追跡調査の結果を報告した(オランダAMC Foundationの助成による)。

 過去に、プラバスタチンの2年投与の有効性と安全性を評価する二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(1997~99年、単施設)に参加した家族性高コレステロール血症患者214例(98%は遺伝学的に確認)に対し、同症に罹患していない同胞95例とともに、追跡調査への参加を依頼した。

 参加者は、質問票に回答し、血液検体を提供し、頸動脈内膜中膜肥厚の測定を受けた。家族性高コレステロール血症患者の心血管疾患の発生率を、同症に罹患している親156例と比較した。

39歳時の心血管イベント:患者1% vs.罹患親26%、心血管死:0% vs.7%
 当初の試験に参加した家族性高コレステロール血症患者214例(平均年齢13.0±2.9歳、男性47%)のうち、試験開始から20年の時点で追跡調査に応じたのは184例(86%)(31.7±3.2歳、48%)で、非罹患同胞は95例(12.9±2.9歳、53%)のうち77例(81%)(31.6±3.0歳、56%)が調査に参加した。

 214例の患者のうち、203例(95%)で心血管イベントのデータが、214例(100%)で心血管系の原因による死亡のデータが得られた。追跡調査時に、184例のうち146例(79%)がスタチンを使用していた。

 患者の平均LDLコレステロール値は、237.3mg/dLから160.7mg/dL(6.13mmol/Lから4.16mmol/L)に低下し、ベースラインからの低下率は32%であった。治療目標(LDLコレステロール値<100mg/dL[2.59mmol/L])は37例(20%)で達成され、このうち8例は<70mg/dLに低下していた。一方、非罹患同胞の平均LDLコレステロール値は、98.5mg/dLから121.9mg/dL(2.55mmol/Lから3.15mmol/L)に増加し、増加率は24%だった。

 全追跡期間における頸動脈内膜中膜肥厚の進行の平均値は、家族性高コレステロール血症患者が0.0056mm/年、同胞は0.0057mm/年であった(性別で補正後の平均差:-0.0001mm/年、95%信頼区間[CI]:-0.0010~0.0008)。

 39歳時の心血管イベント累積発生率は、家族性高コレステロール血症患者が、罹患している親よりも低かった(1% vs.26%、性別と喫煙状況で補正後の無イベント生存率のハザード比[HR]:11.8、95%CI:3.0~107.0)。また、39歳時の心血管系の原因による死亡の累積発生率も、家族性高コレステロール血症患者のほうが罹患親よりも低かった(0% vs.7%)。

 著者は、「LDLコレステロールは、アテローム硬化性心血管疾患をもたらす経路における主要な因子と考えられ、LDLコレステロール値を低下させる治療は、アテローム硬化性心血管疾患の進行の予防あるいは緩徐化において重要であることが明らかとなった」としている。

(医学ライター 菅野 守)