膝関節置換術を受ける患者の術後静脈血栓塞栓症の発生(主要アウトカム10~13日時点)に関して、osocimabの術後投与(0.6、1.2、1.8mg/kg量)はエノキサパリン投与に対して非劣性を示す基準を満たし、osocimab術前投与(1.8mg/kg量)はエノキサパリン投与に対して優越性を示す基準を満たしたことが示された。カナダ・マックマスター大学のJeffrey I. Weitz氏らが、第II相の国際多施設共同非盲検無作為化試験「FOXTROT試験」の結果を報告した。osocimabは、XI因子を阻害する長時間作用型の完全ヒトモノクローナル抗体である。これまでXI因子阻害が血栓塞栓症の予防に効果があるかについては明らかになっていなかった。JAMA誌2020年1月14日号掲載の報告。
osocimabの術前・術後投与について、エノキサパリン、アピキサバンと比較
研究グループは、膝関節置換術を受けた患者の血栓塞栓症に関して、異なるosocimab用量群投与とエノキサパリンおよびアピキサバン投与を比較することを目的とし、試験は判定者盲検下、osocimab投与について試験オブザーバーには盲検下で行われた。13ヵ国54病院で片側の膝関節置換術を受ける成人を対象とし、2017年10月~2018年8月に無作為化を行い、2019年1月まで追跡した。
被験者は、osocimab静脈投与を術後に単回(用量:0.3mg/kg、0.6mg/kg、1.2mg/kg、1.8mg/kg)、同術前に単回(用量:0.3mg/kg、1.8mg/kg)、またはエノキサパリン40mg皮下注を1日1回、あるいは経口アピキサバン2.5mgを1日2回のいずれかを、10日間以上または静脈造影検査を受けるまで投与された。
主要アウトカムは、術後10~13日の間に発生した静脈血栓塞栓症。術後10~13日時点の実施を義務付けた両側性静脈造影検査、または症候性の深部静脈血栓症あるいは肺塞栓症の確認で評価した。エノキサパリンとの比較による非劣性マージンは5%とした。
また、安全性のアウトカムは、大出血または臨床的に意味のある非大出血とし、術後10~13日まで評価した。
エノキサパリンに対する非劣性、優越性を確認
813例(平均年齢66.5歳[SD 8.2]、BMI 32.7[5.7]、女性74.2%)が無作為化を受けた(osocimab術後0.3mg/kg群107例、0.6mg/kg群65例、1.2mg/kg群108例、1.8mg/kg群106例、osocimab術前0.3mg/kg群109例、1.8mg/kg群108例、エノキサパリン群105例、アピキサバン群105例)。主要解析のためのper-protocol集団には600例が包含された(それぞれ76例、51例、79例、78例、77例、80例、76例、83例)。
主要アウトカムの発生は、osocimab術後投与では0.3mg/kg群18例(23.7%)、0.6mg/kg群8例(15.7%)、1.2mg/kg群13例(16.5%)、1.8mg/kg群14例(17.9%)であった。またosocimab術前投与では、0.3mg/kg群23例(29.9%)、1.8mg/kg群9例(11.3%)であった。
エノキサパリン群は20例(26.3%)、アピキサバン群は12例(14.5%)。
osocimabの術後投与はエノキサパリン投与に対して非劣性に関する基準を、0.3mg/kgを除く用量群で満たした。リスク差は0.6mg/kg群10.6%(片側95%信頼区間[CI]:-1.2~∞)、1.2mg/kg群9.9%(-0.9~∞)、1.8mg/kg群8.4%(-2.6~∞)であった。術前投与では、1.8mg/kg群がエノキサパリンに対する優越性の基準を満たした。リスク差は15.1%(両側90%CI:4.9~25.2)であった。
0.3mg/kg群は術後、術前の両投与群とも規定の非劣性基準を満たさなかった。リスク差は術後群が2.6%(片側95%CI:-8.9~∞)、術前群が-3.6%(両側95%CI:-15.5~∞)であった。
大出血または臨床的に意味のある非大出血は、osocimab投与群では最大で4.7%(術前1.8mg/kg群)、エノキサパリン群は5.9%、アピキサバン群は2%観察された。
結果を踏まえて著者は、「osocimabの静脈血栓塞栓症予防としての標準投与に関する有効性、安全性を確立するため、さらなる試験を行う必要がある」とまとめている。
(ケアネット)