前兆のない反復性片頭痛の予防において、マニュアル鍼治療は偽(sham)鍼治療や通常治療に比べ、片頭痛の発現日数や発作回数を抑制することが、中国・華中科技大学のShabei Xu氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2020年3月26日号に掲載された。片頭痛の予防における鍼治療の有益性に関する臨床的なエビデンスは少ない。最近の臨床試験では、鍼治療は、これを施術しない患者に比べ片頭痛の発現が少ないと報告されている。一方、これまでの鍼治療と偽鍼治療の比較では、わずかな差しか認められていないという。
発現日数と発作回数を3群で比較する無作為化試験
研究グループは、前兆のない反復性片頭痛患者において、予防治療としての鍼治療の有効性を評価する目的で、多施設共同無作為化対照比較試験を行った(中国国家自然科学基金などの助成による)。
対象は、年齢15~65歳、神経科医によって前兆のない反復性片頭痛と診断され、病歴が12ヵ月以上で、初発片頭痛が50歳以前に発症し、ベースライン期間の4週間に2~8回の片頭痛発作がみられ、マニュアル鍼治療が未経験の患者であった。
被験者は、マニュアル鍼治療、偽鍼治療、通常治療単独のいずれかを受ける群に2対2対1の割合で無作為に割り付けられた。マニュアル鍼治療群では正しい経穴への鍼治療を20回(1回30分)と通常治療が、偽鍼治療群では経穴とは異なる部分への偽鍼治療を20回と通常治療が、通常治療群では通常治療のみが、8週間行われた。施術は14人の有資格の鍼治療師が行った。試験期間は24週。
主要アウトカムは、ベースライン(無作為割り付け前の4週間)から割り付け後1~20週における4週ごとの片頭痛の発現日数および片頭痛発作の回数の変化とした。
13~20週の発現日数と17~20週の発作回数が改善
2016年6月5日~2018年11月15日の期間に、中国の7施設で150例(平均年齢36.5[SD 11.4]歳、女性123例[82%])が登録され、マニュアル鍼治療群に60例、偽鍼治療群に60例、通常治療群には30例が割り付けられた。最大の解析対象集団(FAS)は147例(それぞれ58例、60例、29例)であった。
偽鍼治療群と比較して、マニュアル鍼治療群は13~20週の片頭痛発現日数が有意に減少し、17~20週の片頭痛発作の回数が有意に低下した。13~16週の平均片頭痛発現日数は、マニュアル鍼治療群で3.5(SD 2.5)日減少し、偽鍼治療群の2.4(3.4)日の減少と比較して改善効果が有意に優れた(補正群間差:-1.4日、95%信頼区間[CI]:-2.4~-0.3、p=0.005)。また、17~20週においても、マニュアル鍼治療群では3.9(3.0)日減少し、偽鍼治療群の2.2(3.2)日の減少に比べ有意に改善した(-2.1、-2.9~-1.2、p<0.001)。
17~20週の片頭痛発作の回数は、マニュアル鍼治療群で2.3(SD 1.7)回低下し、偽鍼治療群の1.6(2.5)回の低下に比べ改善効果が有意に高かった(補正群間差:−1.0、95%CI:-1.5~-0.5、p<0.001)。
マニュアル鍼治療群と通常治療群の比較では、1~20週を通じて、片頭痛発現日数および片頭痛発作の回数がいずれもマニュアル鍼治療群で有意に良好であった。
マニュアル鍼治療群では、鍼関連有害事象が5例(8%)に認められたが、偽鍼治療群にはみられなかった。重篤な有害事象の報告はなかった。鍼刺入を知覚した患者の割合には、有意な差はなかった(マニュアル鍼治療群79% vs.偽鍼治療群75%、p=0.891)。
著者は、「これらの結果は、片頭痛の予防薬の使用に消極的、あるいは無効な患者におけるマニュアル鍼治療の使用を支持するものであり、今後、ガイドラインへの掲載を考慮する必要ある」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)