心筋梗塞発症後、2次予防のための心臓リハビリテーション実施と薬物療法について、患者に対してその重要性を示し実施と服薬を促す冊子の郵送と電話によるフォローアップを行うことで、心臓リハビリテーションの実施率は有意に増加したことが示された。一方で、服薬のアドヒアランスは増加しなかった。カナダ・Women's College HospitalのNoah M. Ivers氏らが2,632例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、著者は、「介入を強化することで服薬アドヒアランスが改善されるのかを調べること、また心臓リハビリテーションの実施と服薬アドヒアランスとの関連を調べることが必要である」と述べている。BMJ誌2020年6月10日号掲載の報告。
MI歴のある患者に、冊子を定期的に郵送し電話でフォローアップ
研究グループは2015年9月~2016年5月にかけて、カナダ・オンタリオ州9ヵ所の心臓治療センターを通じて、アウトカム評価を盲検化した無作為化比較試験を行い、心筋梗塞を発症した2,632例を対象に、2次予防治療のアドヒアランスを改善する介入とその効果を検証した。
被験者を無作為に1対1対1の3群に分け、(1)従来の治療(通常ケア群876例)、(2)心筋梗塞歴のある患者やその家族と一緒に作成した、心筋梗塞後のリハビリテーションや長期の服薬アドヒアランスを促す冊子の5回にわたる郵送(冊子のみ介入群878例)、(3)同冊子の郵送と、郵送後の電話によるフォローアップ(完全介入群878例)をそれぞれ実施した。電話によるフォローアップでは、最初に自動応答システムで治療を順守していない患者を特定し、訓練を受けた医療者が必要に応じてフォローアップを行った。介入は、調整は中央で行ったが、配信は各病院から行われた。
主要アウトカムは2つで、心臓リハビリテーションの完了と、服薬のアドヒアランス。アドヒアランスは、2次予防のための4種の推奨薬(スタチン系薬、抗血小板薬、β遮断薬、アンジオテンシン系阻害薬)の服用状況について、0~4段階(0:過去7日間で服用しなかった推奨薬なし[0種]~4:同服用しなかった推奨薬はすべて[4種])で測定・評価した。データは12ヵ月時点で、盲検化された評価者によって、患者の自己申告および医療管理データベースから集められた。
リハビリテーション完了率、完全介入群37%に対し通常ケア群27%
被験者2,632例の平均年齢は66歳、男性は71%であった。
回答を得られた被験者における心臓リハビリテーションの完了率は、通常ケア群27%(643例中174例)、冊子のみ介入群32%(628例中200例)に対し、完全介入群は37%(531例中196例)だった(補正後オッズ比[OR]:1.55、95%信頼区間[CI]:1.18~2.03)。
一方で、服薬アドヒアランスは、通常ケア群、冊子のみ介入群、完全介入群でいずれも有意差はなかった。1年後の服薬アドヒアランスが0、1、2、3、4種の割合はそれぞれ、通常ケア群が12.2%、8.4%、13.1%、30.3%、36.1%、冊子のみ介入群は12.5%、6.8%、13.6%、30.2%、36.8%、完全介入群は11.7%、6.0%、14.4%、32.9%、35.0%で、冊子のみ介入群vs.通常ケア群のORは0.98(95%CI:0.81~1.19)、完全介入群vs.通常ケア群のORは0.99(0.82~1.20)だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)