米国の非小細胞肺がん(NSCLC)による住民レベルでみた死亡率は、2013年から2016年にかけて、性別や人種を問わず大幅に低下していることが、米国・国立がん研究所のNadia Howlader氏らによる検討で明らかにされた。低下に寄与しているのは診断後の生存率の大幅な改善によるもので、著者は、「治療の進歩による罹患率の低下、とくに同時期に承認された分子標的治療薬の使用が、観察された死亡率の低下に寄与しているであろうことが示唆される」と分析している。肺がんには、NSCLCや小細胞肺がん(SCLC)など異なるサブタイプがある。米国では肺がん全死亡率は低下しているが、住民レベルでみた肺がんのサブタイプ別の死亡傾向については、死亡届にサブタイプまでの情報は記載されないため不明だった。NEJM誌2020年8月13日号掲載の報告。
米国がんレジストリのデータから肺がんサブタイプ別の死亡動向を評価
研究グループは、米国住民の28%を網羅するSEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)18レジストリのデータを用いて、SEERがんレジストリにおける肺がん死亡について評価し、肺がん死と罹患例を関連付けることで、特定の肺がんサブタイプに起因する住民レベルの死亡傾向(罹患率ベースでみた死亡率)を評価した。
また、肺がん罹患率と生存率についても、がんサブタイプ別、性別、暦年別に評価を行った。解析は、ジョインポイントソフトウエアを用いて行い、罹患率の変化、罹患率ベース死亡率を評価した。
NSCLC死亡率は罹患率よりも早く低下、分子標的薬の承認時期と一致
NSCLC死亡率は、NSCLCの罹患率と比べてより早く低下していた。この低下は、経時的な生存率の大幅な改善と関連しており、分子標的治療薬の承認時期と一致していた。
男性におけるNSCLC罹患率ベース死亡率は、2008~16年は年率3.1%だったが、2013~16年は同6.3%だった。これに対応した男性の肺がん特異生存率は、2001年にNSCLCと診断された男性では26%だったのに対し、2014年には同35%に改善していた。この生存率の改善は、人種や民族にかかわらずみられ、また同様の傾向は女性でも認められた。
一方で、SCLC死亡率は、罹患率の低下とほぼ完全に一致して低下しており、生存率の改善はみられなかった。この傾向は、調査期間中のSCLC治療の進歩が限定的だったことと関連していた。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)