新型コロナウイルス感染症(COVID-19)肺炎入院患者(人工呼吸器は未装着)において、トシリズマブは人工呼吸器装着または死亡の複合アウトカムへの進行を減らす可能性が示されたが、生存率は改善しなかった。また、新たな安全性シグナルは確認されなかった。米国・マウントサイナイ医科大学のCarlos Salama氏らが389例を対象に行った無作為化試験の結果で、NEJM誌2021年1月7日号で発表された。COVID-19肺炎ではしばしば強い炎症状態が認められる。COVID-19の発生率には、十分な医療サービスが受けられない人種および民族のマイノリティ集団における不均衡がみられるが、これらの集団のCOVID-19肺炎入院患者について、IL-6受容体モノクローナル抗体トシリズマブの安全性と有効性は確認されていなかった。
高リスク・マイノリティ対象に、安全性と有効性をプラセボ対照無作為化試験で評価
研究グループは、COVID-19肺炎で入院する人工呼吸器未装着の患者を対象に、トシリズマブの安全性と有効性を評価する無作為化試験を行った。
患者を2対1の割合で、標準治療に加えてトシリズマブ(8mg/kg体重を静脈内投与)またはプラセボのいずれかを1回または2回投与する群に、無作為に割り付け追跡評価した。主要アウトカムは、28日目までの人工呼吸器装着または死亡であった。
試験地の選択では、高リスクおよびマイノリティ集団が登録されるように注意が払われた。
28日目までの人工呼吸器装着または死亡、トシリズマブ群12.0%、プラセボ群19.3%
389例が無作為化を受け、修正intention-to-treat集団にはトシリズマブ群249例、プラセボ群128例が含まれた。56.0%がヒスパニックまたはラテン系で、14.9%が黒人、12.7%がネイティブ・アメリカンまたはアラスカ・ネイティブ、12.7%が非ヒスパニック系白人、3.7%がその他または人種/民族不明であった。
28日目までの人工呼吸器装着または死亡患者の累積割合は、トシリズマブ群12.0%(95%信頼区間[CI]:8.5~16.9)、プラセボ群19.3%(13.3~27.4)であった(人工呼吸器装着または死亡のハザード比[HR]:0.56、95%CI:0.33~0.97、log-rank検定のp=0.04)。
time-to-event解析で評価した臨床的失敗は、プラセボ群よりもトシリズマブ群で良好であった(HR:0.55、95%CI:0.33~0.93)。
一方で28日目までの全死因死亡の発生は、トシリズマブ群10.4%、プラセボ群8.6%であった(加重群間差:2.0ポイント、95%CI:-5.2~7.8)。
安全性評価集団における重篤な有害事象の発生率は、トシリズマブ群15.2%(38/250例)、プラセボ群19.7%(25/127例)であった。
(ケアネット)