糖尿病や脳卒中の既往がない心血管イベント高リスク患者では、収縮期血圧目標を120mmHg未満とする厳格降圧が同目標を140mmHg未満とする標準降圧より、無作為割り付けされた治療を受けている期間と試験終了後の両方で、主要有害心血管イベントおよび全死因死亡の発生を有意に低下させることを、米国・アラバマ大学バーミングハム校のCora E. Lewis氏らがSPRINT試験の最終報告として示した。ただし、低血圧等の有害事象の発現率は、厳格降圧群で高かった。NEJM誌2021年5月20日号掲載の報告。
試験終了後約1年間の追跡データも収集し解析
研究グループは、2010年11月~2013年3月に、50歳以上で糖尿病または脳卒中の既往がなく、降圧治療の有無にかかわらず収縮期血圧が130~180mmHgの心血管イベント高リスク患者(臨床的または不顕性心血管疾患、慢性腎臓病、フラミンガムリスクスコアに基づく10年以内の冠動脈疾患発症リスク15%以上、または75歳以上のいずれか1つ以上に該当)9,361例を登録し、収縮期血圧目標120mmHg未満の厳格降圧群(4,678例)と、同目標140mmHg未満の標準降圧群(4,683例)に無作為に割り付けた。
主要評価項目は、心筋梗塞、その他の急性冠症候群、脳卒中、心不全、または心血管死の複合である。試験期間終了時(2015年8月20日)までに発生した主要評価項目イベントは、主要解析のデータロック後に解析するとともに、2016年7月29日までの試験後の観察追跡データを解析した。
追跡データを合わせても、120mmHgの厳格降圧群で有意に予後良好
追跡期間中央値3.33年において、試験期間中の主要評価項目イベントの発生は標準降圧群2.40%/年、厳格降圧群1.77%/年(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.63~0.86)、全死亡はそれぞれ1.41%/年および1.06%/年(0.75、0.61~0.92)であり、いずれも標準降圧群に比べ厳格降圧群で有意に低かった。低血圧、電解質異常、急性腎障害/腎不全、失神などの重篤な有害事象は、厳格降圧群で有意に高頻度であった。
試験期間中と試験後の追跡データを合わせると(追跡期間中央値3.88年)、厳格降圧群は標準降圧群に比べ主要評価項目イベントおよび全死亡が有意に低いままであった(主要評価項目のHR:0.76、95%CI:0.65~0.88、p<0.001、死亡のHR:0.79、95%CI:0.66~0.94、p=0.009)。有害事象の発生についても同様の傾向がみられたが、心不全の発生は両群で差は認められなかった。
(ケアネット)