ウパダシチニブ、体軸性脊椎関節炎の症状を改善/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2022/08/16

 

 活動性のX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎の治療において、ヤヌスキナーゼ阻害薬ウパダシチニブはプラセボと比較して、疾患の徴候と症状を有意に改善し、有害事象の発生率は同程度であることが、米国・オレゴン健康科学大学のAtul Deodhar氏らが実施した「SELECT-AXIS 2試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年7月30日号で報告された。

23ヵ国の無作為化第III相試験

 SELECT-AXIS 2試験は、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎の治療におけるウパダシチニブの有効性と安全性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年11月~2021年5月の期間に、日本を含む23ヵ国113施設で参加者の登録が行われた(AbbVieの助成を受けた)。

 対象は、年齢18歳以上、臨床的に活動性の、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎と診断され、国際脊椎関節炎評価学会(Assessment of Spondyloarthritis International Society:ASAS)の2009年の分類基準を満たし、仙腸関節のMRIで活動性の炎症の徴候が1つ以上認められるか、高感度C反応性蛋白が正常上限値(2.87mg/L)を超えている、あるいはこれら双方がみられる患者であった。強直性脊椎炎の改訂ニューヨーク基準のX線基準を満たす患者は除外された。

 被験者は、ウパダシチニブ(15mg、1日1回、経口)またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、二重盲検下に52週間の投与を受けた。その後、プラセボ群を含む全例に、非盲検下でウパダシチニブ(15mg、1日1回、経口)を52週間投与する継続試験が行われた。

 今回の解析の主要エンドポイントは、14週の時点でASAS40(ASAS基準でベースラインから40%の改善)を達成した患者の割合とされた。解析は、最大の解析対象集団(無作為割り付けの対象となり、試験薬の投与を少なくとも1回受けた全患者)で実施された。

14週時ASAS40達成割合:45% vs.23%

 313例(平均年齢42.1歳、女性59%、平均症状持続期間9.1年、平均診断後経過期間4.4年)が登録され、ウパダシチニブ群に156例、プラセボ群に157例が割り付けられた。295例(94%)(ウパダシチニブ群145例、プラセボ群150例)が14週間の投与を完遂した。

 14週時にASAS40を達成した患者の割合は、ウパダシチニブ群が45%(70/156例)と、プラセボ群の23%(35/157例)に比べ有意に優れた(群間差:22%、95%信頼区間[CI]:12~32、p<0.0001)。

 また、14週時のASAS20(p<0.0001)、ASAS PR(部分寛解)(p=0.0035)、BASDAI50(Bath Ankylosing Spondylitis Disease Activity Indexのベースラインから50%以上の改善)(p=0.0001)も、ウパダシチニブ群で有意に良好であった。

 さらに、14週時の全背部痛(p=0.0004)、夜間背部痛(p=0.0001)、BASFI(Bath Ankylosing Spondylitis Functional Index)(p<0.0001)、ASQoL(Ankylosing Spondylitis Quality of Lifeスコア)(p<0.0001)なども、ウパダシチニブ群で有意に改善した。

 14週時の有害事象の発生率は両群で同程度であり、ウパダシチニブ群が48%(75/156例)、プラセボ群は46%(72/157例)であった。重篤な有害事象は、ウパダシチニブ群が3%(4例)、プラセボ群は1%(2例)で発現し、試験薬の投与中止の原因となった有害事象も、それぞれ3%(4例)および1%(2例)で認められた。

 重篤な感染症は、ウパダシチニブ群が1%(2/156例)、プラセボ群は1%(1/157例)で発現し、帯状疱疹もそれぞれ1%(2例)および1%(1例)でみられた。好中球減少の発生率は、それぞれ3%(5例)および0%だった。また、ウパダシチニブ群では、日和見感染症や悪性腫瘍、主要有害心血管イベント、静脈血栓塞栓症、死亡の報告はなかった。

 著者は、「これらの知見は、ウパダシチニブが活動性のX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎の新たな治療選択肢となる可能性を支持するものである」としている。

(医学ライター 菅野 守)