重症心不全への完全磁気浮上型遠心ポンプ、5年生存率は良好/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2022/09/27

 

 重症心不全患者に対する左室補助人工心臓(LVAD)療法において、完全磁気浮上型遠心ポンプLVAD(HeartMate 3)は、5年後の複合アウトカムおよび全生存が良好であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMandeep R. Mehra氏らが米国の69施設で実施した無作為化非劣性試験「MOMENTUM 3試験」の延長試験で示した。MOMENTUM 3の本試験では、2年後の後遺障害を伴う脳卒中またはデバイス交換の再手術のない生存に関して、HeartMate 3のHeartMate II(軸流ポンプLVAD)に対する優越性が認められ、米国食品医薬品局(FDA)は、本試験でLVAD療法を継続している患者の追跡調査を5年後まで延長することを条件に、2018年、HeartMate 3を永久植込み治療(destination therapy:DT)として承認している。著者は、「今回の結果は、完全磁気浮上型遠心ポンプ式LVADの使用を支持するものである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2022年9月8日号掲載の報告。

遠心ポンプ群vs.軸流ポンプ群、2年間の無作為化非劣性試験終了後、3年間追跡

 MOMENTUM 3試験はLVADを要する重症心不全患者を対象とし、心臓移植へのブリッジまたはDTかを問わず、HeartMate 3(遠心ポンプ群)またはHeartMate II(軸流ポンプ群)を植え込む群に無作為に割り付け追跡評価した。2年間の無作為化非劣性試験が終了し、2年後の追跡調査時にLVAD療法を継続していた患者について、さらに3年間(植え込み後5年まで)追跡調査を実施した。

 主要評価項目は、後遺障害を伴う脳卒中(修正Rankin尺度スコア>3)またはデバイス交換の再手術のない生存(移植、回復またはLVAD療法)、その他の評価項目は全生存率などであった。

 無作為化非劣性試験で植込み術を受けた1,020例(遠心ポンプ群515例、軸流ポンプ群505例)のうち、2年後もLVAD療法を継続していたのは536例(遠心ポンプ群289例、軸流ポンプ群247例)であった。

5年無イベント生存率54.0% vs.29.7%、5年全生存率58.4% vs.43.7%

 536例中、59例は主試験終了と延長試験開始の間にギャップが生じたため2年以降のデータを収集できず、477例(遠心ポンプ群258例、軸流ポンプ群219例)の2年以降のデータが解析に含まれた(年齢中央値62歳、女性86例)。なお、477例のうち295例(遠心ポンプ群178例、軸流ポンプ群117例)は2019年6月~2021年4月の期間に同意を得て延長試験に登録され、他の182例からは限定的なデータが提供された。

 後遺障害を伴う脳卒中またはデバイス交換の再手術のない5年無イベント生存率のKaplan-Meier推定値は、遠心ポンプ群54.0%、軸流ポンプ群29.7%であった(ハザード比[HR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.45~0.67、p<0.001)。

 5年間の追跡期間中に、遠心ポンプ群は515例中156例(30.3%)、軸流ポンプ群は505例中184例(36.4%)が死亡した。Kaplan-Meier法による5年全生存率は、それぞれ58.4%および43.7%であった(HR:0.72、95%CI:0.58~0.89、p=0.003)。

 重篤な有害事象の頻度は、遠心ポンプ群が軸流ポンプ群より有意に低かった(デバイス血栓症:0.010 vs.0.108イベント/患者年、脳卒中:0.050 vs.0.136イベント/患者年、出血:0.430 vs.0.765イベント/患者年)。

(ケアネット)

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コメンテーター : 許 俊鋭( きょ しゅんえい ) 氏

東京都健康長寿医療センター センター長

J-CLEAR評議員