重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のデルタおよびオミクロン変異株に感染した米国の必須(essential)/最前線(frontline)労働者では、感染前149日以内のmRNAワクチン(BNT162b2[ファイザー製]、mRNA-1273[モデルナ製])の2回または3回接種は未接種と比較して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状は軽度で、ウイルスRNA量は少なかったことが、米疾病対策センター(CDC)のMark G. Thompson氏らHEROES-RECOVERネットワークの調査で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年10月18日号に掲載された。
米国6州の前向きコホート研究
本研究は、COVID-19に対するmRNAワクチンの2回または3回接種と、その症状およびSARS-CoV-2のウイルスRNA量との関連の評価を目的とする前向きコホート研究であり、2020年12月14日~2022年4月19日の期間に、米国の6州(アリゾナ、フロリダ、ミネソタ、オレゴン、テキサス、ユタ)でSARS-CoV-2に感染した患者が登録されたHEROES-RECOVERネットワークのデータが使用された(米国国立予防接種・呼吸器疾患センターなどの助成を受けた)。
HEROES-RECOVERネットワークには、医療従事者や早期対応業務従事者、その他の必須/最前線労働者から成る大規模なコホートが含まれる。このコホートは、教育、農業、食品加工、輸送、固形廃棄物収集、公共事業、政府サービス、保育、環境サービス、接客業などの分野の労働者が含まれ、他者と3フィート(約91cm)以内の距離で定期的に接触する職業であり、この環境で週に20時間以上働く人々と定義された。
主要アウトカムには、症状の発現、特異的な症状(発熱、悪寒など)、症状発現期間、医療探索行動(受診)などの臨床アウトカムと、ウイルス量(定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応[RT-qPCR]法で評価)などのウイルス学的転帰が含まれた。
オミクロン変異株では、3回接種者で症候性感染症のリスクが高い
COVID-19感染患者1,199例(年齢中央値41歳、女性59.5%)が解析に含まれた。14.0%が始原ウイルス株、24.0%がデルタ変異株、62.0%がオミクロン変異株に感染していた。
デルタ変異株では、感染症出現の14~149日前に2回目のワクチン接種を受けた患者は未接種患者に比べ、症状発現の確率が有意に低かった(77.8%[21/27例]vs.96.1%[74/77例]、オッズ比[OR]:0.13[95%信頼区間[CI]:0.0~0.6])。症状が発現した場合は、感染前7~149日に3回目の接種を受けた患者は未接種患者に比べ、発熱または悪寒の報告が有意に少なく(38.5%[5/13例]vs.84.9%[62/73例]、OR:0.07[95%CI:0.0~0.3])、症状発現の平均日数が短かった(10.2日vs.16.4日、群間差:-6.1日[95%CI:-11.8~-0.4])。
一方、オミクロン変異株では、症候性感染症のリスクは2回接種患者と未接種患者で差はなかったが、3回接種患者は未接種患者よりもリスクが有意に高かった(88.4%[327/370例]vs.79.4%[85/107例]、OR:2.0[95%CI:1.1~3.5])。
また、症候性オミクロン変異株感染患者では、感染前7~149日に3回目の接種を受けた患者は、未接種患者と比較して発熱または悪寒の訴えが有意に少なく(51.5%[160/311例]vs.79.0%[64/81例]、OR:0.25[95%CI:0.1~0.5])、医療を求めて受診した患者も有意に少数だった(14.6%[45/308例]vs.24.7%[20/81例]、OR:0.45[95%CI:0.2~0.9])。
感染前14~149日に2回目の接種を受けたデルタおよびオミクロン変異株感染患者は未接種患者に比べて、平均ウイルス量が有意に低値を示した(デルタ変異株:3 vs.4.1 log
10コピー/μL、群間差:-1.0 log
10コピー/μL[95%CI:-1.7~-0.2]、オミクロン変異株:2.8 vs.3.5、-1.0[-1.7~-0.3])。
著者は、「オミクロン変異株によるCOVID-19の症状は、デルタ変異株に比べ軽度で、症状発現期間も短いようであり、これはウイルスRNAの排出量が少ないことと関連した」としている。
(医学ライター 菅野 守)