inaxaplin、APOL1バリアント保有患者で蛋白尿を抑制/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2023/03/29

 

 アポリポ蛋白L1をコードする遺伝子(APOL1)の毒性機能獲得型バリアント(G1またはG2)を持つ人は、蛋白尿性慢性腎臓病(CKD)のリスクが高く、CKD患者はこれら2種のバリアントを持たない人に比べ末期腎臓病への進展が加速化することが知られている。米国・Vertex PharmaceuticalsのOgo Egbuna氏らは、VX19-147-101試験において、2種のAPOL1バリアントを有する巣状分節性糸球体硬化症の患者では、低分子量の経口APOL1チャネル機能阻害薬inaxaplinの投与により蛋白尿が減少することを示した。研究の成果は、NEJM誌2023年3月16日号に掲載された。

前臨床研究と3ヵ国での第IIa相試験

 研究グループは、前臨床研究としてinaxaplinのAPOL1チャネル機能阻害能の評価を行い、次いでフランス、英国、米国の12施設で非盲検単群第IIa相試験(VX19-147-101試験)を実施した(Vertex Pharmaceuticalsの助成を受けた)。

 前臨床研究では、テトラサイクリン誘導性APOL1ヒト胎児由来腎臓(HEK293)細胞でinaxaplinのAPOL1チャネル機能阻害能を評価し、APOL1 G2相同遺伝子組み換え蛋白尿性腎臓病モデルマウスを用いて蛋白尿に対するinaxaplinの効果の評価を行った。

 第IIa相試験では、患者登録が2020年9月に開始され2021年8月に完了した。対象は、年齢18~65歳、2種のAPOL1バリアントを持ち、生検で巣状分節性糸球体硬化症が確認され、蛋白尿(尿蛋白/クレアチニン比[g/gCr]≧0.7~<10、かつ推算糸球体濾過量≧27mL/分/1.73m2体表面積)を有する患者であった。

 被験者は、標準治療に加え、inaxaplin(1日1回、13週間[15mgを2週間、45mgを11週間])の経口投与を受けた。

 主要アウトカムは、inaxaplinの服薬アドヒアランス率が80%以上の患者における、尿蛋白/クレアチニン比の、ベースラインから13週時までの変化の割合であった。

安全性も良好

 in vitroおよびin vivoの研究では、inaxaplinはAPOL1蛋白に直接結合して濃度依存性にAPOL1チャネル機能を阻害し、APOL1を介した腎臓病のモデルマウスにおいて蛋白尿を減少させることが示された。

 第IIa相試験には16例(平均[±SD]年齢38.8±14.5歳、女性9例[56%])が登録された。inaxaplinのアドヒアランス率の閾値を満たした13例の尿蛋白/クレアチニン比の平均値は、ベースラインの2.21±0.95から13週時には1.27±0.73へと低下し、変化率の幾何平均は-47.6%(95%信頼区間[CI]:-60.0~-31.3)であった。蛋白尿の減少は早期にみられ、13週の投与期間を通じて持続的に減少した。

 inaxaplinの服薬アドヒアランス率を問わない全患者の解析では、1例を除く全例で主解析と同程度の低下(幾何平均変化率:-44.0%、95%CI:-56.3~-28.3)が認められた。

 inaxaplinの投与を1回以上受けた16例のうち15例(94%)で少なくとも1件の有害事象が発現したが、いずれも軽度~中等度であり、有害事象による投与中止例はなかった。少なくとも3例で発生した有害事象は、頭痛(4例)、背部痛(3例)、吐き気(3例)であった。担当医によってinaxaplin関連の可能性があると判断された有害事象は3例(頭痛2例、頭痛・腹部膨満・消化不良・背部痛1例)で認められた。

 著者は、「この第IIa相試験において、APOL1機能の阻害を標的とする治療が、APOL1蛋白の毒性機能獲得型バリアントによって引き起こされる腎臓病の進行に関連する糸球体損傷のマーカーである蛋白尿を減少させるという、初めてのエビデンスが得られた」としている。