予後予測分類が中リスクまたは高リスクで未治療の進行腎細胞がん患者において、チロシンキナーゼ阻害薬カボザンチニブとニボルマブ+イピリムマブの併用療法はニボルマブ+イピリムマブと比較して、1年時の無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したが、Grade 3/4の有害事象の頻度は高かったことが、米国・ハーバード大学医学大学院のToni K. Choueiri氏らが実施した「COSMIC-313試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年5月11日号で報告された。
国際的な無作為化プラセボ対照第III相試験
COSMIC-313試験は、北米、欧州、南米、アジアなどの諸国の施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年6月~2021年3月の期間に患者の無作為割り付けが行われた(米国・Exelixisの助成を受けた)。
年齢18歳以上で、未治療の進行淡明細胞型腎細胞がんを有し、予後が国際転移性腎細胞がんデータベースコンソーシアム(IMDC)の分類で中リスクまたは高リスクの患者を、ニボルマブ(3mg/kg体重、静注)+イピリムマブ(1mg/kg体重、静注)との併用で、カボザンチニブ(40mg/日、経口、実験群)またはプラセボ(経口、対照群)を投与する群に無作為に割り付けた。
ニボルマブ+イピリムマブは3週に1回、4サイクル投与され、その後ニボルマブ維持療法(480mg、4週に1回)が最長で2年間施行された。
主要評価項目はPFSであり、無作為化の対象となった最初の550例(PFS集団)について独立の審査委員会が盲検下で評価した。
完全奏効率は両群とも3%
855例(intention-to-treat集団)が登録され、実験群に428例(年齢中央値61歳、男性76%)、対照群に427例(60歳、73%)が割り付けられた。PFS集団は、実験群が276例(61歳、77%)、対照群は274例(60歳、74%)だった。全体の約65%が腎摘出術を受けていた。
PFS集団における12ヵ月時のPFS達成見込みは、対照群が0.49であったのに対し、実験群は0.57と有意に優れた(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.57~0.94、p=0.01)。PFS中央値は、実験群が未到達(95%CI:14.0~未到達)、対照群は11.3ヵ月(7.7~18.2)だった。
また、盲検下の独立審査委員会によるPFS集団における奏効率は、実験群が43%、対照群は36%であり、このうち完全奏効率はいずれも3%であった。病勢コントロール率はそれぞれ86%、72%、奏効までの期間中央値は2.4ヵ月、2.3ヵ月、奏効期間中央値はいずれの群も未到達だった。
Grade3/4の有害事象は、実験群が79%、対照群は56%で発現した。対照群に比べ実験群で頻度の高かった有害事象として、ALT値上昇(27% vs.6%)、AST値上昇(20% vs.5%)、高血圧(10% vs.3%)が認められた。投与中止をもたらした試験薬関連の有害事象の割合は、実験群が45%、対照群は24%であった。
著者は、「先行研究と比較して両群とも完全奏効率が低かったが、これは腎摘出術を受けていない患者の割合が他の第III相試験に比べて高く、腎腫瘍の残存病変を有する患者が多かったためと考えられる。今後、長期のフォローアップで完全奏効率が上昇するかはわからない」としている。現在、全生存期間の解析のためのフォローアップが継続中だという。
(医学ライター 菅野 守)