行動支援との併用によるcytisiniclineの6週間および12週間投与は、いずれも禁煙効果と優れた忍容性を示し、ニコチン依存症治療の新たな選択肢となる。米国・ハーバード大学医学大学院のNancy A. Rigotti氏らが米国内17施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「ORCA-2試験」の結果を報告した。cytisinicline(cytisine)は植物由来のアルカロイドで、バレニクリンと同様、ニコチン依存を媒介するα4β2ニコチン性アセチルコリン受容体に選択的に結合する。米国では未承認だが、欧州の一部の国では禁煙補助薬として使用されている。しかし、従来の投与レジメンと治療期間は最適ではない可能性があった。JAMA誌2023年7月11日号掲載の報告。
cytisinicline 6週間投与と12週間投与の有効性をプラセボと比較検証
研究グループは2020年10月~2021年6月に、現在1日10本以上タバコを吸っており、呼気一酸化炭素(CO)濃度が10ppm以上で、禁煙を希望する18歳以上の成人810例を、cytisinicline 3mgを1日3回12週間投与(12週間投与群、270例)、cytisinicline 3mgを1日3回6週間投与後プラセボ1日3回6週間投与(6週間投与群、269例)、プラセボ1日3回12週間投与(プラセボ群、271例)の3群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。全例が無作為化から12週目までにカウンセラーによる10分間の禁煙行動支援を受け(最大15回)、16週、20週および24週時には短いセッションが行われた。
主要アウトカムは、投与期間の最終4週間における生化学的に確認された禁煙継続(すなわち、6週間投与では3~6週目、12週間投与では9~12週目)。副次アウトカムは、投与期間の最終4週間から24週目まで(すなわち、6週間投与では3~24週目、12週間投与では9~24週目)の禁煙継続とした。
2週目から12週目までの禁煙継続は、毎週評価した前回受診時からの禁煙の自己申告と呼気CO濃度10ppm未満で確認し、16週、20週および24週目の禁煙は、判定基準のRussell Standard(前回の受診時から5本以上喫煙していない)を用いて自己申告で確認した。
禁煙継続率はcytisinicline群でプラセボ群の約3~6倍
無作為化された810例(平均年齢52.5歳、女性54.6%、1日平均喫煙数19.4本)のうち、618例(76.3%)が試験を完遂した。
禁煙継続率は、cytisinicline 6週間投与群とプラセボ群との比較では、3~6週目で25.3% vs.4.4%(オッズ比[OR]:8.0、95%信頼区間[CI]:3.9~16.3、p<0.001)、3~24週目で8.9% vs.2.6%(3.7、1.5~10.2、p=0.002)であった。また、cytisinicline 12週間投与群とプラセボ群との比較では、9~12週目で32.6% vs.7.0%(OR:6.3、95%CI:3.7~11.6、p<0.001)、9~24週目で21.1% vs.4.8%(5.3、2.8~11.1、p<0.001)であった。
主な有害事象は悪心、頭痛、異常な夢、不眠症であったが(各群10%未満)、そのうち異常な夢と不眠症のみプラセボ群よりcytisinicline群で発現率が高かった。
有害事象による投与中止は、cytisinicline群で539例中16例(2.9%)(6週間投与群:2.2%、12週間投与群:3.7%)、プラセボ群で270例中4例(1.5%)であった。試験薬に関連する重篤な有害事象は認められなかった。
なお、著者は研究の限界として、参加者が主に白人であったこと、有害事象の検証が短期間であったこと、本試験における行動支援の強度等は一般的な医療現場で提供できるものを超えている可能性があることなどを挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)