てんかんの疫学について経済的な側面から考察を行った結果、貧困がてんかんの罹患率および死亡率増加のリスク因子であることを、イタリア・IRCCS Mario Negri Institute for Pharmacological ResearchのEttore Beghi氏らが報告した。また、貧困問題を解決することで、てんかんによる死亡を防ぐことも可能であると指摘している。Epilepsia誌オンライン版2014年6月25日号の掲載報告。
著者らは、経済的な側面からてんかんの考察をする意義について、次のように述べている。
・てんかんの罹患率、有病率および死亡率は、それぞれの国のさまざまな経済情勢により違いがみられる。
・それらの相違は、方法論の問題、若年死亡率、発作の抑制、社会経済的要因およびスティグマなどにより説明されうる。しかし、急性症候性または非誘発性の孤発発作の患者を含めた場合は、診断分類に誤りが生じ、結果的にてんかんの疫学に影響する可能性がある。
・そのほかにも、対象とした集団の年齢、人種、てんかんの定義、調査方法が前向きか後ろ向きか、症例の報告源および経験的および予想されるスティグマなどがバイアスとなる。
・若年死亡率は、低所得国における課題であり、同国では治療の格差、脳の感染症および外傷性脳損傷が、高所得国と比べて頻度が高い。また、未治療のまま放置されているてんかん患者または急性症候性てんかん患者がいる場合、これが死亡率に反映されている可能性が考えられる。
上記を踏まえた考察の結果、低所得国における主な課題として以下を提示している。
・貧しい地域社会において、抗てんかん薬のコンプライアンス欠如は死亡リスクの増加、入院の増加、交通事故および骨折の増加と関連している。
・てんかんは50%の症例において自然寛解する臨床状態である。
・低所得国における未治療患者を対象とした研究において、寛解の割合は、患者が治療を受けている国のデータとオーバーラップしていた。自発的な報告(ドア・ツー・ドアの調査など)に基づく場合、寛解状態にある患者は、恥ずかしさのあまり、また何のベネフィットもないため自身の疾患を公表しない傾向がある。これは、てんかん生涯有病率の過小評価につながる可能性がある。
・低所得国では、貧困者の割合が高所得国に比べてきわめて多い。
・貧困は、てんかんの罹患率、死亡率増加のリスク因子である。
・低所得国でみられるてんかんの高い罹患率と有病率は、高所得国の低所得層でもみられる。
・てんかん発作の状態は死亡率増加と関連しており、これは低所得国におけるてんかん罹患率と有病率の違いから一部説明がつく。
・低所得国および高所得国における貧困は、てんかんの死亡を予防しうる原因といえる。
関連医療ニュース
「抗てんかん薬による自殺リスク」どう対応すべきか?
小児てんかん患者、最大の死因は?
てんかん治療の改善は健康教育から始まる
担当者へのご意見箱はこちら
(ケアネット)