医療一般|page:6

日本人の牛乳・乳製品の摂取と不眠症との関連

 労働安全衛生総合研究所の佐藤 ゆき氏らは、日本人における牛乳や乳製品の習慣的な摂取と不眠症との関連を調査した。Nutrition and Health誌オンライン版2024年9月25日号の報告。  東日本で20〜74歳の6万633人(男性:2万2,721人、女性:3万7,912人)を対象に、コホート研究データを用いた横断的研究を実施した。牛乳、乳製品の摂取、睡眠状況、その他の生活習慣に関するデータは、自己記入式質問票を用いて収集した。牛乳、乳製品に関する質問は、全乳、低脂肪牛乳、チーズ、ヨーグルト、乳酸菌飲料を含め、摂取頻度(週1回未満、週1〜2回、週3〜6回、1日1回以上)を評価した。睡眠状況の評価には、アテネ不眠症尺度を用いた。

BRCA1/2変異保有者の避妊薬使用、乳がんリスクとの関連/JCO

 生殖細胞系列BRCA1/2変異保有者において、ホルモン避妊薬が乳がんリスクを増加させるかどうかは不明である。今回、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのKelly-Anne Phillips氏らの研究で、ホルモン避妊薬は、とくに長期使用で、BRCA1変異保有者の乳がんリスク上昇と関連することが示された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年10月2日号に掲載。  本研究では、4つの前向きコホート研究からプールされた観察データを用いて、避妊薬使用とBRCA1/2変異保有女性の乳がんリスクとの関連についてCox回帰を用いて評価した。

子供がコロナで入院すると子供も親も精神衛生に影響/国立成育医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連するスティグマは、抑うつ、不安、孤独感などの心身の苦痛を引き起こす世界的な問題となっている。しかし、COVID-19のスティグマと、それに関連する子供や親のメンタルヘルスへの影響を調査した研究はほとんどないのが現状である。  国立成育医療研究センター総合診療部の飯島 弘之氏らの研究グループは、COVID-19に感染した子供とその親に対して、COVID-19に関わるスティグマ(患者に対する「差別」や「偏見」)と、メンタルヘルスへの影響について調査する研究を実施した。その結果、主観的スティグマがある子供と推定スティグマがある親は、1ヵ月後もメンタルヘルスにネガティブな影響がみられた。本研究結果は、Pediatrics International誌2024年1~12月号に掲載された。

インフルワクチンの日本人の心不全に対する影響~PARALLEL-HF試験サブ解析/日本心不全学会

 呼吸器感染症に代表されるインフルエンザ感染は、心筋へウイルスが移行する直接作用、炎症惹起性サイトカイン放出による全身反応などによって心血管障害を及ぼす。また、プラークの不安定化、炎症による心拍数の不安定化への影響なども報告されているが、海外研究であるPARADIGM-HF試験が検証したところによると、インフルエンザワクチン接種が心不全患者の死亡リスク低下と関連する可能性を示唆している。

関節リウマチは気管支拡張症リスクを高めるが、その逆は認められない

 遺伝的に予測された関節リウマチ(RA)と気管支拡張症リスクとの間には因果関係があるというメンデルランダム化(MR)研究の結果が「Frontiers in Medicine」に6月20日掲載された。RAは気管支拡張症リスクを高めるが、その逆の関係は認められなかったという。  RAと気管支拡張症の関連を示唆する報告はいくつかなされているが、因果関係は明らかになっていない。武漢第四病院(中国)のYuanyuan Li氏らは、FinnGenコンソーシアムからRAのゲノムワイド関連研究(GWAS)データを、IEU Open GWASプロジェクトから気管支拡張症のGWASデータをそれぞれ収集し、RAと気管支拡張症の関連を検討した。単変量メンデルランダム化(UVMR)解析には、主に逆分散加重(IVW)推定を用いた。加えて、双方向MR解析、再現MR解析、多変量MR(MVMR)解析、媒介分析、感度分析も行った。

心血管疾患リスクの予測にはBMIよりも体丸み指数が有用

 過体重が人の心臓の健康に与える影響を予測する上では、「体丸み指数(body roundness index;BRI)」の方がBMIよりも優れた指標である可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。6年にわたって継続的にBRIが高かった人では低かった人に比べて、心血管疾患(CVD)リスクが163%高いことが示されたという。南京医科大学(中国)Wuxi Center for Disease Control and PreventionのYun Qian氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Heart Association」に9月25日掲載された。  2013年に提唱されたBRIは、ウエスト周囲径と身長を基に算出する腹部肥満の指標で、BMIやウエスト周囲径などよりも体脂肪や内臓脂肪の割合を正確に反映すると考えられている。一方、従来から使われているBMIは体重と身長のみから算出する。そのため、筋肉量が非常に多い人では値が高くなることもあり、肥満度の指標としては不正確だとして批判されることもある。

歯科患者の不安を客観的に評価できる質問票

 歯科治療を受ける患者の不安や恐怖の強さを、6種類の顔のイラストから選択してもらって客観的に評価する質問票が開発された。大阪歯科大学欠損歯列補綴咬合学講座の三野卓哉氏らによる研究によるもので、詳細は「The Journal of Advanced Prosthodontics」に8月20日掲載された。開発された質問票の信頼性や妥当性の検証結果も報告されている。  歯科治療に強い不安や恐れを抱く「歯科恐怖症」の有病率は、成人の5~22%と報告されている。歯科恐怖症では歯科受診の機会が少なくなり口腔疾患が進行してしまうというリスクばかりでなく、不安や恐怖のために痛みに対する感受性がより高くなったり、歯科医師の説明の理解がおろそかになったりすることも問題となる。また、医科においては、治療に伴う不安を評価するツール(例えば状態-特性不安尺度〔STAI〕)が確立され臨床に役立てられているが、歯科の日常診療で活用できる簡便な評価ツールは存在しない。

統合失調症の多剤併用から単剤療法への切り替えによる副作用への影響〜SwAP試験II

 オランダ・マーストリヒト大学のMushde Shakir氏らは、統合失調症入院患者における抗精神病薬多剤併用療法から単剤療法への切り替えが、各種副作用にどのような影響を及ぼすかを調査した。Schizophrenia Research誌オンライン版2024年9月16日号の報告。  対象となる副作用には、精神症状、自律神経症状、性機能障害、代謝系副作用、運動機能障害を含めた。オランダの精神科病院2施設の慢性期入院患者136例を対象に、9ヵ月間の並行ランダム化オープンラベル臨床試験を実施した。対象患者は、併用継続群または切り替え群のいずれかにランダムに割り付けた。切り替え群は、第1世代または第2世代抗精神病薬のいずれかを中止する3ヵ月間の漸減期間を設けた後、単剤療法を実施した。評価は、ベースライン時およびフォローアップ3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月後に実施した。精神学的、神経学的、自律神経学的、性機能関連副作用の評価には、UKU副作用評価尺度を用い、運動機能障害の測定には、St. Hans評価尺度を用いた。各代謝パラメーターも収集した。

10月25日開催『第6回ヘルスケアベンチャー大賞』最終審査会【ご案内】

 2024年10月25日(金)に『第6回ヘルスケアベンチャー大賞』最終審査会が開催される。「アンチエイジングからイノベーションを!」をテーマに、アンチエイジングに資するヘルスケア分野のビジネスプランやアイデアを企業から募集。その中から書類審査を経て、見事に選ばれたファイナリスト5社がヘルスケアベンチャー大賞の獲得を目指し、最終ピッチを行う。そのほか、中村 雅也氏(慶應義塾大学医学部整形外科学教室)による特別講演や、イベント後には、最終審査会を終えたばかりのファイナリストとの交流の場として懇親会などが設けられる。

医師国家試験、不合格となる学生の特徴は?

 岐阜大学医学部医学科の学生を対象として、医師国家試験に不合格となる学生の特徴を検討する研究が実施された。本研究の結果が、塩入 俊樹氏(岐阜大学大学院医学系研究科 脳神経科学講座 精神医学分野)らによって、BMC Medical Education誌2024年8月27日号で報告された。  本研究では、2012~18年に岐阜大学医学部医学科に入学した学生637人を対象として、入学時と1、2、4、6年次の5つの時点のデータを収集した。データには、大学入学前の情報(性別、年齢、出身高等学校の所在地、成績など)および大学在学中の成績(基礎医学、臨床医学、CBT-IRT、卒業試験の成績など)が含まれた。これらのデータを用いて、ロジスティック回帰分析を実施し、医師国家試験の予測合格率を算出した。

歯周病原菌は頭頸部がんのリスクを高める?

 歯周病原菌は、頭頸部がんリスクを高める可能性があるようだ。新たな研究で、13種類の口腔内細菌が頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)のリスク上昇と関連していることが示された。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部人口健康学教授のRichard Hayes氏らによるこの研究結果は、「JAMA Oncology」に9月26日掲載された。Hayes氏は、「われわれの研究結果は、口腔衛生習慣を維持すべきことに対する新たな理由を示すものだ。フロスを使っての歯磨きは、歯周病だけでなく頭頸部がんの予防にも役立つ可能性がある」と述べている。

メトホルミンがlong COVIDのリスクを軽減する可能性

 2型糖尿病の治療に広く使用されている経口血糖降下薬のメトホルミンが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後の症状の遷延、いわゆるlong COVIDのリスクを軽減することを裏付ける、新たなデータが報告された。米ミネソタ大学のCarolyn Bramante氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Care」に9月17日掲載された。  Long COVIDは、慢性疲労、息切れ、ブレインフォグ(頭がぼんやりして記憶力などが低下した状態)などの症状を呈し、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染後、数週から数カ月続くこともある。現在、米国内で数百万人がこの状態に苦しめられていると考えられている。

2型糖尿病患者のフレイルリスクに地域差

 高齢2型糖尿病患者のフレイルリスクが、居住地域によって異なるという実態が報告された。農村部では都市部よりリスクが高く、また農村部居住患者は手段的日常生活活動(IADL)と社会的日常生活活動(SADL)の低下も認められるという。香川大学医学部看護学科慢性期成人看護学の西村亜希子氏、京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻の原島伸一氏らによる論文が、「BMC Geriatrics」に8月17日掲載された。  糖尿病は、ストレス耐性が低下した状態であるフレイルのリスク因子であり、両者が併存する場合、身体障害や死亡のリスクがより上昇する可能性があるため、早期介入が特に重要と考えられる。また、フレイルリスクを高める因子として居住地域も該当し、都市部よりも農村部でリスクが高いことが示唆されている。ただし、糖尿病とフレイルの併発に居住地域の影響があるのかという点は未だ検討されていない。西村氏らは、糖尿病患者のフレイル予防に関する多機関共同研究(f-PPOD研究)のデータを用いた横断的解析により、この点を検討した。

高齢者の心不全救急搬送、気温低下の1~2日後に注意/日本心不全学会

 今冬はラニーニャ現象発生の影響で昨年よりも厳しい寒さとなり、心不全による入院の増加に一層の注意が必要かもしれない。では、どのような対策が必要なのだろうか―。これまで、寒冷曝露や気温の日内変動(寒暖差)が心筋梗塞や心不全入院を増加させる要因であることが示唆されてきたが、外気温低下の時間的影響までは明らかにされていない。10月4~6日に開催された第28回日本心不全学会学術集会のLate breaking sessionでは、これまでに雨季後の暑熱環境下における気温上昇と高齢者の心血管救急搬送リスクとの関連や脳卒中救急搬送リスク増加を示唆する疫学研究4)などを報告している藤本 竜平氏(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 疫学・衛生学分野/津山中央病院 心臓血管センター・循環器内科)が『時間層別による外気温低下と心不全救急搬送の関連』と題し、新たな知見を報告した。

食事の質や睡眠時間が抑うつ症状に及ぼす影響

 不健康な食生活や不健康な睡眠時間を含むライフスタイルは、うつ病の修正可能なリスク因子として広く知られている。中国・四川大学のYue Du氏らは、食事の質、睡眠時間、抑うつ症状との関連およびこれらの複合的な影響を調査するため、本研究を実施した。BMC Public Health誌2024年9月27日号の報告。  対象は、2007〜14年のNHANESデータから抽出された20歳以上の成人1万9,134人。不健康な食生活は、Healthy Eating Index-2015の平均スコア60パーセンタイル未満、不健康な睡眠時間は、夜間の睡眠時間が7時間未満または9時間以上とした。対象者をライフスタイル別に4群に分類した。分析には、関連変数をコントロールする重み付け多変量ロジスティック回帰を用いた。さらに、ロバスト性を評価し、潜在的な高リスク群を特定するため、層別化分析を行った。

手術なしで白内障の治療が可能に?

 ラットと冬眠するタイプのリスを用いた研究で、白内障を改善する可能性のあるタンパク質を見つけたと、米国立眼研究所(NEI)網膜神経生理学部門のWei Li氏らが報告した。動物実験の結果が人間でも再現されるとは限らないが、「RNF114」と呼ばれるこのタンパク質が同定されたことで、手術なしで白内障を治療できる可能性が出てきたとLi氏らは話している。研究結果は、「The Journal of Clinical Investigation」9月17日号に掲載された。Li氏は、「この白内障の可逆的な現象の分子ドライバーについての理解は、われわれに治療戦略の方向性を指し示すことになるかもしれない」と言う。

ウイルスを寄せ付けない鼻スプレーを開発

 薬剤を含まない鼻スプレーが、理論的には、マスク着用よりもインフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどの呼吸器系病原体の拡散を防ぐのに効果的である可能性を示唆する研究が報告された。このスプレーに含まれている医学的に不活性な成分が、人に感染する前に鼻の中の病原体を捕らえるのだという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院麻酔科のNitin Joshi氏らによるこの研究結果は、「Advanced Materials」に9月24日掲載された。  論文の責任著者の一人である、ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJeffrey Karp氏は、「新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、呼吸器系病原体が非常に短期間で、人類に極めて大きな影響を与えることをわれわれに示した。その脅威は、今も続いている」と話す。

高血圧、脂質異常症、糖尿病で服薬遵守率が高い疾患は?

 高血圧、脂質異常症および糖尿病患者の服薬遵守率を、同一対象内で比較した結果が報告された。慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室の松元美奈子氏、武林亨氏らの研究によるもので、詳細は「Pharmacoepidemiology and Drug Safety」に8月15日掲載された。服薬非遵守の関連因子が、疾患ごとに異なることも明らかにされている。  過去にも服薬遵守率に関する研究報告は少なくない。しかし、異なる診療環境で治療を受けている多数の患者集団を対象として、複数の疾患治療薬の服薬遵守率を比較検討した研究は限られている。これを背景として松元氏らは、山形県鶴岡市で進行中の鶴岡メタボロームコホート研究(TMCS)のデータを医療請求データにリンクさせて、心血管疾患の主要リスク因子である、高血圧、脂質異常症、糖尿病の患者の服薬遵守状況に関する検討を行った。

転移を有する乳がん、ctDNA変化と生存率の関連~メタ解析

 転移を有する乳がん患者の血中循環腫瘍DNA(ctDNA)における特定のゲノム変化の検出は、全生存期間(OS)や無増悪生存期間(PFS)、無病生存期間(DFS)の悪化と関連していたことを、カナダ・Research Institute of the McGill University Health CentreのKyle Dickinson氏らがシステマティックレビューおよびメタ解析によって明らかにした。JAMA Network Open誌2024年9月5日号掲載の報告。

体重増加が抗精神病薬の継続に及ぼす影響〜メタ解析

 抗精神病薬のアドヒアランス不良や服薬中止は、統合失調症スペクトラム障害を含む精神疾患患者にとって、重要な臨床上の問題である。抗精神病薬誘発性体重増加は、アドヒアランス不良のリスク因子であると報告されているが、抗精神病薬誘発性体重増加とアドヒアランス不良や服薬中止との関連を調査したシステマティックレビューは、これまでなかった。カナダ・Centre for Addiction and Mental HealthのRiddhita De氏らは、これらの関連性を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2024年9月17日号の報告。